2022 Fiscal Year Research-status Report
Endogenic School and Community Innovation in Rural Korea ;Focusing on the Continuation Factors of Small-Scale School Revitalization Cases
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22K02333
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
尾崎 公子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90331678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥後 耕生 豊岡短期大学, その他部局等, 講師 (00791196)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 小規模校活性化事例 / 人口減少社会 / 教育エコシステム / 内発的学校づくり / マウル教育共同体 / 社会的経済 / 学校協働組合 / マウル共同体づくり |
Outline of Annual Research Achievements |
急激な人口減少の下、学校の小規模化が問題になっている。小規模化する学校の存否は、子どもの教育保障とともに地域の将来にも関わる。人口減少社会において、学校を地域のインフラとしてどのように機能させ、地域の公益を実現させていくのか。本研究は、この問いに対して、日本と同様人口減少が進む韓国の取組みに着目してアプローチする。 韓国政府は、同じく学校の小規模校化が進む中で、学校統廃合に財政支援を行うと同時に、統廃合しても小規模校であり続ける状況を受け、田園学校事業(2009~2014)をはじめとする小規模校活性化策を日本に先駆けて導入しており、先行事例として位置づけることができる。 結果的には、小規模化に抗えず、農山漁村の学校の半数以上は、1982年から2020年までに廃校か分校に改編されている。だが、そうした厳しい現実のなかで、分校から本校に昇格した学校や児童・生徒数のみならず、地域の社会増がみられる事例がある。本研究は、こうした事例に着目し、学校や地域の特性を分析し、活性化をもたらしている要因、一過性ではなく取組みが継続している要因を抽出する。そのために4つの分析観点を設定している。すなわち、①学校特性②学校と地域をつなぐプラットフォーム③若者の視点からの事例検証④地域特性である。 2022年度は、②に焦点をあて、学校と地域の協働関係を構築する概念として教育エコシステム、仕組みとして学校協同組合に関する分析を進めた。韓国では、両者の関係を再構築するのに、エコロジーの概念を援用し、教育主体間のガバナンス改革に着手し、同時に、ボランタリーなアソシエーションによる仕事づくりを含めた地域づくりがおこなわれ、そのための法整備が進んでいることを把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、小規模校存続事例の継続要因として、分析観点②「学校と地域をつなぐプラットフォーム」に関する分析を進めた。そこで、学校と地域の協働関係を構築する概念として教育エコシステム、仕組みとして学校協同組合に焦点をあて、必要な文献、データを入手した。また、内発的地域づくりにあたる進歩的自治体のマウルづくりの政策動向、新自由主義経済のオルタナティブとして導入されてきた社会的経済の概要について考察を進めた。 以上の通り、分析観点②に関する基本的構造を把握できたことから、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
京畿道教育庁がマウル教育共同体活性化支援条例(2015)を制定して以降、同様の条例が各地で制定されており、そこでキーワードとなってきているのが教育エコシステムという概念である。学校と地域の関係を再構築するのに、エコロジーの概念が援用されており、教育行政と一般行政、さらに学校、保護者、住民、市民活動家など、さまざまなアクター・セクターがマウル(地域)教育共同体形成に関与する主体となる官民学協力ガバナンスが模索されるようになっている。つまり、従来の行政による「統治」から,地域内の多様なアクターの協働による「協治」へという教育ガバナンス改革、セクター・アクター間の脱セグメント・フラット化、脱中央統制が志向されている。この背景には、学校改革には地域との有機的な関係構築が欠かせないという問題意識だけでなく、人口絶壁と呼ばれるような人口減少があり、地域消滅に対する危機感がある。教育エコシステムの構築は、政府や自治体によるボランタリーなアソシエーションによる仕事づくりを含めた地域づくりとも連動するものとなっている。 2023年度は、以上の考察を踏まえ、小規模再生事例において、どのような教育エコシステムが構築されているのか。脱学校中心、セクター/アクター間の脱セグメント・フラット化が持続可能性の要件なのか。それらを具体的に検証するために、現地調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、訪韓調査の態勢が整わず、旅費の支出が国内のみであったため、次年度使用額が生じた。2023年度分とあわせて、訪韓調査の旅費等に支出する予定である。
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