2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K02353
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
油布 佐和子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80183987)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 教員の過重労働 / 献身的教師像 / 労働過程の3極構造 / 強権的善意 / 関係的ケアでの精神疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
教員の長時間労働や過重労働は、客観的・構造的な側面を取り扱うことが多いが、その中で看過されているのが、働き手の感情やモチベーションなど、意識の問題である。 長時間労働や過重労働で疲弊している実態があり、「働き方改革」では様々な施策が示されているにもかかわらず、教員自身が労働時間に無頓着で、「児童・生徒のため」にという理由から労働・労働時間という概念を意に介していないことが明らかになっている。こうした教員の意識は、教育社会学においては、教員文化の一端を示す「献身的教師像」として知られているが、この問題に切り込むことなくしては、労働条件を改善するどのような施策も、「過重労働」から教員を開放することはないであろう。そこで、本研究年度では、理論的整理を中心に「献身性」について検討した。 「献身性」とは本来「利他主義的配慮」であり、対象となる相手の要求に「専心没頭する」ことだと確認された。「献身性」は、人を対象とする職業に従事する人々に共通してみられる心理的傾向であるが、問題は、これが「労働過程」に取り込まれている点である。3極構造の労働過程論では、相手に対する対応が、監督者・管理者の目に晒され評価されるという構造となっており、そのために、教員個人の意識である「献身性」は、管理・監督の目のもとに変質を余儀なくされる。本来は「利他主義的な配慮」である「献身性」が、自らの行為を的確なものと認めてもらうために、「強権的善意」や「対立葛藤予防的」な思いやりに変化を遂げるのである。この理論的な整理を踏まえて、次年度はフィールドワーク・インタビュー調査を実施する。 同時に、人を対象とする職業の典型であるケアワーク・介護職研究からは、分業に伴う労働者の意識の変化や問題が指摘されており、「関係的ケア」領域での精神的疲労が明らかになっている。これとの関係についても検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
勤務校での日常的な仕事の他に、退職の年度でもあることから、学会や諸機関との連携におけるまとめの仕事が予想以上に多く、時間が取れなかった。 しかしながら、「献身性」に係る文献の検討は一定程度の成果を上げ、論文にまとめることもできた。、
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、理論的に明らかになった3極構造における労働過程について、フィールドワーク・インタビュー調査を実施し知見の集積に務める。 接客サービス労働研究から得られた「労働過程」の研究は、顧客の性格や顧客との関係から考えるに、教員の労働研究に多くの示唆を与えるものの十分ではない。一方、介護職・ケアワークの研究の成果には参考になる点が多いが、「労働過程研究」の中でそれが行われているわけではないため、多少の読み替えや解釈が必要となる。こうした先行研究の問題を検討しながら、なるべく多くの「教員の声」を収集し、教員が自分の労働をどのように理解しているのか、特に「生徒のために」という言葉で簡単に長時間労働・過重労働につながっていく現場の実態をどのように把握しているのかについて、教員の「声」を集め分析する。
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Causes of Carryover |
本年度は、フィールドワークを多く実施する予定であったが、業務多忙のため、出張等の時間を確保することができなかった。そのため、文献研究や他研究者との意見交流が中心となり、本来予定していた予算の多くを次年度に持ち越すこととなった。
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Research Products
(1 results)