2023 Fiscal Year Research-status Report
ROCFと視線移動計測の分析によるドロップアウト・リスク児の学習支援法確立研究
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22K02380
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中野 広輔 愛媛大学, 教育学部, 教授 (60735330)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 視線計測 / 音読 / 読みの困難 / 発達障害(神経発達症) |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度には定型発達の若年成人において30人の視線計測を記録することができた。2023年度はそれをより詳しく分析・意味づけする活動を行った。特に単文3種類の音読時の視線に関しては、読み書き困難の評価に対して有意義な指標の発見を目指した。そこで読み書き障害やその他発達障害の病態生理について情報を収集しながら、まずは30人、3文、計90個の単文音読時視線の座標を抽出した。そして読みの困難の指標としてはこれまでの知見と合わせ「音読にかかる時間」と想定し、困難に関係する可能性がある数値をピックアップし、音読時間との相関を検討した。具体的な数値としては、「上下方向に逸脱した支援の個数」「上下方向に逸脱した視線の合計距離数」「水平方向の進行のスムーズさとしての、水平方向座標と音読時間の相関」などである。その結果、「上下方向に逸脱した合計距離数」が音読時間に相関を示し、読みの困難と関係があることを示唆した成果を得た。さらに行替え音読の際の困難さやASD特性との関係などの課題が見えた。一方、ROCF描画時の視線計測に関しては、「クラスター」に着目した。クラスターとはROCFの構造物において「ある程度まとまったもの」という9種類の構造物である。ここに視線を停留させているかどうかを検討したところ、停留時間がある程度長いことが示唆された。これはクラスターが「ある程度まとまっている」ことを生理学的に裏付けているといえる。もう一つのコンテンツ「みてみて」は、社会性発達に課題のある児童生徒・若年成人に試みる方向である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
定型発達の若年成人30名のデータを取得できたのは順調な経過である。その後、音読時の分析が非常に複雑なこと、解像度の関係でROCFの視線分析が困難なことから、その解明に時間を要したため、計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずROCFに関しては、現行のGazefaiderでの記録法では解像度の関係から困難なため、刺激図としてより線分間隔が広い刺激図を利用する方針とした。そしてASD、知的障害のある実際の子どもに「みてみて」(社会性発達を評価するコンテンツ)を実施し、その特徴をつかむこととする。また、単文の音読のみでは「行替わりの際の急速眼球運動の影響」を評価できないため、これからはさらに複数行文の音読時視線計測を追加し、より詳細な音読時視線分析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
定型発達若年成人30人分の「単文音読」「ROCF」「みてみて」のデータは膨大かつ複雑で、神経発達症に関する最新知見を収集しながらデータ分析するのに多大な時間を要した。そのため当初計画よりやや遅れが生じたことが次年度使用額が発生した理由である。
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