2023 Fiscal Year Research-status Report
ASD児における嗅覚を介した親子間社会的絆形成不全モデルの包括的解明
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22K02464
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
樽見 航 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40714895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩永 竜一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (40305389)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 匂い / オキシトシン / フェロモン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、匂いが社会的絆形成に及ぼす影響と自閉スペクトラム症(ASD: Autism Spectrum Disorder)との関連性について検証することを目的としている。以前の研究から、ASD患者の脳内でオキシトシンやバソプレシン濃度の低下が報告されており、点鼻投与によって不安症状や社会性の改善が見られることが示唆されている。 また、ASD患者は化学シグナルに対して定型発達とは異なる生理反応を示す可能性があるため、父母の匂いに対する反応がASD児と定型発達児で異なる可能性がある。しかしながら、匂いによる親子間相互作用による社会的絆形成に関する研究は不十分であり、本研究によりASDの治療や予防に向けた重要な手掛かりを得ることができる可能性がある。 これまでに、オキシトシン測定で使用してきたEnzo Life Sciences社のOxytocin ELISA kit(#ADI-900-153A)の検出感度を確認し、新lotでも十分唾液中オキシトシンを検出可能であることを示した。今年度は、当初の予定通り、被験者募集を開始し、これまでに定型発達児10名、ASD傾向児童1名(親からの自己申告で確認)に対して血縁関係がある父親、母親、血縁関係がない他人の父親、母親のフェロモンをシャツに付着させ、フェロモン曝露実験を行った。次年度は、引き続き被験者募集を行い、サンプル数を十分確保していくことを目指す。その後、唾液中コルチゾル、オキシトシン濃度の測定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度のCOVID-19の影響や機器の故障、方法論的問題などにより予定より実験が遅れたことが影響し、全体的に遅れてはいるが、被験者募集を開始し一定の成果が得られる目途がついてはいる。しかし、不慮の事故により、代表者が右膝の前十字靭帯断裂(全治2か月)となり、若干の研究の遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
スモールスケールの実験で確認してきた両親の匂いが子の唾液中オキシトシン濃度を増加させるという検証結果を再度確認し、その後、ASD傾向の高い子では、唾液中オキシトシン濃度がどのように変化するのか検証していく。
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Causes of Carryover |
全体的な研究の遅延および不慮の事故により、予定サンプルに到達していないことと物品の消費期限のことを考慮し、まだ発注を行っていないことが次年度使用額が生じた理由である。 次年度は、少なくともサンプルの解析を行うために、消耗品の発注・使用をする予定である。
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