2022 Fiscal Year Research-status Report
国家政策との関連にみる近代日本教育における「技術」概念の生成と受容
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22K02484
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
平舘 善明 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (10439292)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 技術教育 / 技術 / 手工科 / 芸能科工作 / 図画工作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近代日本教育のなかで「技術」概念が生成・受容されていった経緯を、明治政府成立後から戦時期を経た戦後1950年代までを対象として、①国家政策と直轄研究機関の役割、②文部省法令・教育課程基準・教科書での使用とその文脈、③教育関係雑誌にみられる学校現場での使用と認識の3つのレベルから経年的・重層的にとらえる。そして、その内容と特徴を同時代の米国との比較の視野をもって解明する。 本年度は、研究実施計画に基づき、(1)戦前の「技術」に関する国家政策と直轄研究機関の役割の整理、および、(2)戦前の「技術」に関する文部省法令・教育課程基準・教科書の文言と意図の整理を行なうことを試みた。(1)に関しては、①「技術」概念の使用初期に関して、工部省発足および「技術院」官制公布に関する内容を整理し、②明治・大正期のその後の「技術」や「科学技術」政策を追い、③戦時期の国家総動員法、徴発令、戦時行政特例法、学徒戦時動員体制確立要綱等での「技術」の用語使用とその意図について整理した。(2)に関しては、(1)の作業から得た国策の枠組みに照らし、①戦前の国民学校令と関連する省令・訓示等に使用された「技術」とその文脈、②芸能科工作に関する目的・内容の規定、③教科書内の文言について整理することを試みた。 例えば(1)では、工部省が工学・鉱山・鉄道・造船・電信等の「本邦未曾有ノ技術」である「諸工業」を所管していたこと、「科学技術新体制確立要綱」の決定に基づく「技術院」の創設、その官制にて「技術」ではなく「科学技術」と規定されたこと、そこでの科学の応用(applied science)としての技術の性格等々を整理することができた。 本研究に関するまとまった直接的な研究実績はまだ得られていないものの、研究成果の一部は学会発表・論文に反映させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画に記載した項目について取り組み、一部、貴重な研究資料を入手できたものの、未だ残るコロナ禍の事情等から、とりわけ年度前半での資料収集がおぼつかず、その結果、実施計画に記載した一部の分析を来年度に持ち越すことになった。この点に関連して、資料の収集・分析を行ったなかで、新たに分析対象として取り上げるべき事項を発見することができた。このことは研究の進展という積極的意義をもつ反面、作業時間をさらに要する結果にもつながった。「やや遅れている」と判断した理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得た研究成果および資料を活かして、研究実施計画の内容に、既述の新たに発見できた分析事項を加えて遂行することで、より深いレベルでの課題追求を行なっていく。
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Causes of Carryover |
既述のように、未だ残るコロナ禍の事情等により、年度前半での資料収集がおぼつかず、そのための旅費を繰り越すことになった。次年度前半のうちに、すみやかに予定していた資料収集を行う。
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