2023 Fiscal Year Research-status Report
身近な有機化合物を利用した物質の構造決定の指導法に関する研究
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22K02492
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
山口 忠承 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (60295722)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 卓上型磁気共鳴装置 / 有機化合物 / 化学構造 / 実験方法 / 指導方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
卓上型の核磁気共鳴装置は、高校の理科室にも設置でき有機化合物の構造を知る上で有効な装置である。試料中に含まれる有機化合物の構造を知ることにより化合物の性質を予想することができる。また、化学構造が既知な化合物が試料中に含まれる場合は、試料中の化合物の純度を調べることができる。純度を調べることが出来れば、既存の高校化学の教科書で、精製した化合物の指標となる融点や沸点の計測が可能となり、目的の化合物を精製しなければならないという動機づけとなると考えられる。試料中の化学構造や純度を知ること出来る点で、有機化合物を用いた化学物質を扱う探究活動等において研究を推進する上で有効な装置であると考えられる。 本研究では、卓上型核磁気共鳴装置を用いた高校の理科室で実施できる新規の実験教材の開発と指導法の確立を行っている。高校の現場で核磁気共鳴装置を活用するためには、生徒や生徒の実験の指導の立場にある教師が、高校までに学ぶ知識に加えて核磁気共鳴装置の必要性を認識できるように実験内容や指導法を工夫する必要がある。具体的には、高校「化学」の学習内容として取り上げているサリチル酸を用いた実験教材の授業実践と、安全で身近な材料を中心とした糖の分析法の教材の授業実践を行い、実践後のアンケートを通じて指導方法の検討を行った。また、タンパク質のアミノ酸の変換反応を簡略化した、アスパルテームのアミノ酸への分解反応を中心に実験教材化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サリチル酸を原料とした教材に関しては、合成したサリチル酸、アセチルサリチル酸をいくつかの分析法で分析する手法の体験と、受講者がこれらの実験結果を科学的な手法で統合的に判断できる教材を開発し、大学の実験講義の中で教材の実践を行った。教科書掲載の化合物の同定法の融点や塩化鉄(III)溶液添加だけでなく、高校化学では学ばない薄層クロマトグラフィーにより化合物が純物質か混合物かどうかを知ることや、卓上型核磁気共鳴装置による化学構造解析を行い、実験の受講者がこの装置による分析の必要性を感じたことを確認できた。この研究成果を論文として公表した。 糖類の分析の教材化の研究に関しては、さとうきびから糖が含まれる成分を抽出し、水分を蒸発させて糖を作り、作った糖を卓上型の核磁気共鳴装置で分析する実験方法を確立した。開発した教材は、大学院生の講義(90分x4回)の実践を行い、これに加えて、現職教員向けの研修(1日)の中で教材の実践を行い、教育効果について確認を行った。研修実施直後と研修6か月後にアンケートを取り、研修の有効性について確認できた。 タンパク質のアミノ酸への変換反応を利用した教材に関しては、タンパク質が分解すると複数のアミノ酸が生成するため、生成するアミノ酸の種類を減らすため、人工甘味料のアスパルテームを用いた分解反応と、分解後のアミノ酸の精製を組み合わせた実験教材の開発を行い、研究の成果として学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、昨年度同様、学校現場での授業実践を中心に、本研究で開発した実験教材の指導法の改善を行う。 糖を卓上型核磁気共鳴装置で分析する研究は、現在、この実験教材用いた授業を受講した人数が10名程度と少ないため、今年度も大学院の授業の中で実験教材の改良と授業実践の受講者数を増やす。最終的に論文の成果として公表予定である。 アスパルテームをアミノ酸へと変換する実験教材の開発は、開発した教材を学校現場で実践し教育効果について確かめる。この他、安全性の高い身近な食材や植物の抽出液を用いた教材の開発も並行して行う。授業実践で用いることのできる、練習実験としての提示教材の開発を行い、本実験が円滑に進むように改良を行う。開発した実験教材は、学校現場で実践する機会が得られたため、教材の改善点について検討を行う。
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Causes of Carryover |
出張費(3/19-3/20)が今年度に計上されていないため。
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Research Products
(4 results)