2022 Fiscal Year Research-status Report
多様性を包摂する学力保障と評価システムの構築ーリテラシー実践を核に
Project/Area Number |
22K02499
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
村上 呂里 琉球大学, 教育学部, 教授 (40219910)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 道浩 琉球大学, 教育学部, 教授 (10352642)
山口 剛史 琉球大学, 教育学部, 教授 (20381197)
高瀬 裕人 琉球大学, 教育学部, 准教授 (30823083)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 学習としての評価 / リテラシー実践 / 教師の実践的見識 / 鑑識眼 / 自己評価と相互評価 / 保護者参加の評価 / 自立した読み手の育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は初年度であるため,リテラシー実践を核に据えた「学習としての評価」あるいはそれをめざす実践を3教室で試みた。(1)A小学校1年の教室では生活に根ざしたリテラシー実践に年間を通して取り組み、文字の獲得から文づくりへ、生活科と連動して実感的理解に基く説明文学習、動作化や役割読みなど身体を介してリテラシーの基礎を培う物語学習等を行い、3学期に1年間の表現・作品をポートフォリオに綴り、学びの歩みを振り返る場を設けた。自己評価・友達との相互評価・保護者が参加する評価に取り組み、「登場人物になりきって音読できた」「友達と話し合ったから発表できるようになった」など、身に付いた言葉の力や学習方法について振り返った。保護者からも「成長が実感出来て感動した」等の感想が寄せられた。終業式には自己評価・友達からの評価・保護者からの評価をまとめた「賞状」を児童に贈り、自己肯定感と〈学びに向かう力〉へとつなげた。(2)B小学校4年の教室では、学年毎に読書リストを作成し、自分で選書した本うをリストに加えられるようにし、年間通して読書感想と記録を交流するシステムづくりを試みた。7月と2月に教員全体で全学年の児童作品を相互評価する場を設け、教師の評価の観点を豊かにした。(3)C小学校3年の教室では、年間通して物語教材を中心に「自立した読み手」を育成するリテラシ-実践に系統的に取り組んだ。第Ⅰ段階:教師の指導のもとに豊かに読み深める体験、第Ⅱ段階:その体験をもとに「物語を読み深めるまほうのかぎ」について話し合い、読む観点と方法をメタ化する、第Ⅲ段階:皆で作成した「10の物語を読むまほうのかぎ」を活用し、選書した書を自力で読み深めるという3段階を実践した。3学期の振り返りからは、皆で作成した誇りから〈学びに向かう力〉の湧出、読む観点や方法への自覚の高まりなどの姿が見られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度として小学校3校で、リテラシー実践と「学習としての評価」実践の試行を行うことが出来、成果があったため、おおむね順調に進展していると考える。ただし、教員不足を背景とする教員の多忙化等のため学校ぐるみの実践は厳しく、クラス単位の実践とならざるをえない状況もある。また、それぞれの実践の省察は第2年目以降の課題となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)1年目の3つの実践について、①リテラシー実践を豊かにし、自己肯定感や「学びに向かう力」へとつなげるための教師の実践的見識②豊かなリテラシー実践を生む読書環境システムの解明③「自立した読み手を育成する道筋の解明④リテラシー実践をめぐる「学習としての評価」の方法の解明⑤保護者する加した評価の意義等について省察する。(2)その省察から導き出された成果と課題を土台に、2年目のリテラシー実践および「学習としての評価」実践に取り組む。(3)保護者が参加する評価システムの構築に取り組む。
|
Causes of Carryover |
研究分担者の一人が副学部長職に就いたため、共同研究の推進に十分な時間をとることができなかった事情があり、旅費を全て使用することができなかった。また離島にあるB小学校では教員不足を背景に教員の多忙感が著しく、共同研究を全学年で推進するのが困難であったため、読書環境整備の予算を十分に使うことができなかった。B小学校では教員の悩みに寄り添いつつ、リテラシー実践を進めていくために次年度はさらに旅費を執行していく。また、A小学校、C小学校でのリテラシー実践に力を入れ、より豊かなリテラシー実践としていくための読書環境整備の予算を執行していきたい。
|