2023 Fiscal Year Research-status Report
多様性を包摂する学力保障と評価システムの構築ーリテラシー実践を核に
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22K02499
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
村上 呂里 琉球大学, 教育学部, 教授 (40219910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 道浩 琉球大学, 教育学部, 教授 (10352642)
山口 剛史 琉球大学, 教育学部, 教授 (20381197)
高瀬 裕人 琉球大学, 教育学部, 准教授 (30823083)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 質的データ重視の評価 / 学習としての評価 / エンパワメントする評価 / リテラシー実践と評価 / 多様性と評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
2校をフィールドに実践研究を行った。(1)小学校1年生において年間を通してリテラシー実践に取り組み、3月に1年間の学びの足跡(児童の作品等)を展示して振り返り、どのような言葉の学びがあったか、自己評価と相互評価を行った。それに対して保護者がコメントを書き、それを一綴りにまとめたものを「賞状」として渡し、児童が培った学びの質を評価して自己肯定感を高め、次の学年に臨めるようにした。外言領域のみならず、「想像する」「考える」など内言領域に関わる自己評価や「友達の考えをつなぐことができた」等学び方に関わる自己評価も生まれた。一方でLDの児童に対する有効な支援が課題となった。(2)日本語能力において劣位に置かれ、非常に不安定な状態にあった来日間もないベトナム人児童に対して、バイリンガルリテラシー実践と多文化共生のための特設授業に取り組んだ。生活綴方的方法に学び、母語による「手紙」で思いを表現し、母語支援者の力を借りながら日本語にして友達や教師に伝えるという実践を重ね、認め合いの質を高めていった。また特設授業「国際理解とユニバーサルデザイン」に取り組み、級友と共に母語・母文化を学ぶ重要性について、当該児童、級友、保護者、教師の評価を総合的に考察して学びの質を検証した。(1)(2)を通して、①子どもの固有の文脈において学びの質を理解できる教師や保護者の参加による(=ローカルな文脈における)学力の総合的な評価、②児童作品等の質的データ重視によるアカウンタビリティ・システムの再構築、③マイノリティとの応答関係を組み込み、子ども・保護者をエンパワメントするアカウンタビリティ・システム構築(石井英真(2020)参照)を実践的に探究した。また多様性を包摂する学力保障とリテラシー実践の土台として、琉歌学習に関する副読本を編集したり、ベトナム人児童向けの日本語教材開発について研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は2校をフィールドとして、①子どもの固有の文脈において学びの質を理解できる教師や保護者の参加による(=ローカルな文脈における)学力の総合的な評価、②児童作品等の質的データ重視によるアカウンタビリティ・システムの構築、③マイノリティとの応答関係を組み込み、子ども・保護者をエンパワメントするアカウンタビリティ・システム構築に向けて、実践二つに取り組むことができた。しかし、代表者・分担者が学会主催地としての実務や管理職業務に忙しく、論文化が十分にできておらず(1本は投稿中)、今後論文化し、さらに課題を明らかにしていくことが課題である。また、当初フィールドとして予定していた学校では、深刻な教員不足等を背景に実践研究を進めることがきわめて困難となり、オルタナティブスタンダードの策定に向けては十分進展させることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの実践研究について論文化を図り、そこで導き出された課題を踏まえ、引き続き児童作品等学びの質をめぐる自己評価・相互評価・保護者による評価を総合的に組み合わせた評価システムの構築に向けて、実践研究を行う。さらに、地域共同体の方も評価に参加していただくことをめざし、ボトムアップ的なオルタナティブスタンダードの作成をめざし、子ども・保護者・地域共同体をエンパワーする評価システムの構築をめざしたい。
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Causes of Carryover |
代表者及び分担者が、学会主催地としての実務や管理職業務による多忙のために十分研究に専念することができなかった。また、主なフィールドとする予定であった学校で、深刻な教員不足を背景に共同実践研究を行うのがきわめて困難な状況となったため。次年度は、教員不足が改善される見込であり、不イールド校での共同実践研究を年間を見通して行いたい。
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