2023 Fiscal Year Research-status Report
Construction of a school refusal response model in relation to school refusal at the adolescent stage and identity development
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22K02503
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
川上 知子 長崎国際大学, 人間社会学部, 講師 (20824501)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 不登校・不登校傾向 / アイデンティティ発達 / 青年期段階 / 不登校対応モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、特に青年期(中・高・大)に位置づく生徒・学生を対象とし、不登校とアイデンティティ発達との関連について検討することを核に据え、その考察結果を踏まえた不登校対応モデルの構築を目的としている。文部科学省から毎年前年度の結果として秋に公表されている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、各学校段階ごとに不登校の実数や実態、不登校の要因等が詳細に報告されている。また、近年はコロナ禍以降の不登校数が増加しているなどの指摘が報道によってなされ、不登校者数の増減のみに議論が焦点化されることは懸念すべきことであると考えている。不登校の要因・実態等は、人の数だけ存在し、予防可能な不登校がある一方で、不登校を呈したことで救われた命が存在する可能性もある。本当に予防すべきは、「不登校を呈する」ことではなく、「不登校の長期化」ではないかという問題意識に端を発し、不登校の心理的な側面における実態把握に焦点をあて、本研究を進めている。具体的には、アイデンティティの確立を発達課題とする青年期において、不登校を呈することがアイデンティティ発達にどのような影響を与えているのかを検討するために、まずは、不登校傾向の状態像に着目し、その状態におけるアイデンティティ発達を「探求」と「コミットメント」の視点で明らかにすることを試みている。 2023年度は、大学生の不登校傾向(五十嵐、2015の尺度を使用)についての研究動向を整理し、2020年度に実施した調査結果についての分析と考察についての再検討を行った。その結果、調査対象者(複数の地方私立)の大学生の不登校傾向の状態(全般的な登校意欲の喪失傾向、享楽活動の優先傾向、心理項目A:対人恐怖傾向、心理項目B:抑うつ傾向)に着目し、その状態ごとにアイデンティティ発達の「探求」と「コミットメント」との関連について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予備調査についての論文を学会誌へ投稿した結果を踏まえ、大学生の不登校傾向についての研究動向を新たに整理する必要性があり、その研究動向のまとめを執筆、その後に「大学生の不登校傾向とアイデンティティ発達との関連」についての論文修正を行ったことにより、次の研究に進むことができなかった。ただ、丁寧に研究動向を整理したことと、査読結果の視点を加味し、修正に取り組んだことから、分析結果の考察が、より深まったという側面があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年リジェクトされた修正論文を再度学会誌へ投稿する。また、次の研究に進むにあたり、所属機関での倫理申請(博士課程在籍大学院、職場)を提出し、①中高生の不登校傾向とアイデンティティ発達に関するweb調査の実施、②中高で不登校を呈した大学生を対象とした質的研究を含んだ調査(webによる記述を含む調査)を進める準備、の以下2点を計画的に進める。①に関しては、修正を行った「大学生の不登校傾向とアイデンティティ発達との関連」についての研究結果を踏まえ、同じ青年期に属する、中学生、高校生を対象に同じ尺度で調査を行う。同じ青年期に属しているとはいえ、各学校段階でアイデンティティ発達の「探求」と「コミットメント」との結果に特徴や共通点が見られるのかについて検討をし、青年期における不登校傾向の状態ごとの理解を深めたい。②に関しては、当事者への調査の難しさから、倫理的な配慮を行ったうえで、不登校を呈していた際の当時の状態についての記述から、当事者視点に立った実態把握を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
予備調査に関する論文の査読結果(リジェクト)を踏まえ、再度、分析・考察を行った時間を要し、予定していたweb調査の準備、実施、データ収集(業者委託)がかなわず、そのための費用が発生していない。今年度は、リジェクト論文の改稿をほぼ終了しているため、再度投稿した後は、2つの研究計画(中高生を対象としたweb調査、大学生を対象とした自由記述を含む量的調査)を進める。業者委託によるweb調査の費用が高い可能性があるため、現在の未使用額の多くを使用することが想定される。
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