2022 Fiscal Year Research-status Report
教員養成におけるプロジェクト型学習でのオペラ制作の体系化
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22K02549
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
枝川 一也 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (20243529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野内 愛 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (60710697)
伊藤 真 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (70455046)
小長野 隆太 広島修道大学, 人文学部, 准教授 (60452603)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オペラ / 教員養成 / 問題解決能力 / 指導による働きかけ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は,申請者の勤務校である広島大学にて,野外オペラ「魔笛」と,オペラ「忘れられた少年」を公演し,その制作プロセスの中でどのように協働的問題解決能力が育成されていくのかを検討した。特に野外オペラ「魔笛」の稽古の様子を全て動画撮影したものをテキスト化して分析したことにより,指導者と学習者のやりとりや,指導者による働きかけのあり様を捉えることができた。 指導者の働きかけとして,1つ目は,「オペラを構成するさまざまな要素についての複合的な学びを促進する働きかけ」である。さまざまな要素が関連しあっているということは,総合芸術であるオペラの特殊性でもある。演奏の指導の中で,衣装や照明など,さまざまな要素を複合的に学んでいくための働きかけが存在していた。2つ目は「演奏や作品制作において恒常的に学習者自身の中で行われている思考に,さらに負荷をかける働きかけ」である・音楽作品の制作においては,例え指導者がいなくとも,より良い演奏,作品を追求する上で,学習者の中で必ず思考が揺さぶられている。それに加え,指導者がさらに思考の揺さぶりという負荷をかける働きかけが存在していた。 指導者は学習者に対し,ある分野へのエキスパート的な学びにとどまらず,全体を俯瞰できるようなオールラウンダーとしての学びを求めていたのに対し,学習者は,他者の学びを自分の学びとして吸収,転化することができておらず,結果的にエキスパートを生み出す側面が強調されていた。したがって,指導者は,学び方そのものへの働きかけが必要であるという一考察を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,オペラ制作に関連する科目を履修している他大学の学生にインタビュー調査を実施する予定であったが,新型コロナウイルス感染症の影響を受け,コロナ禍以前の活動がどの大学もできていなかった。したがって,他大学への調査ができていない。しかしながら,劇場教育を行なっているイタリアの中学校の実態調査へと研究計画を修正し,実際にイタリアに渡航して,イタリアの中学生の演劇教育の実態を視察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,4月に実施するオペラ公演「フィガロの結婚」後の学習者へのアンケート調査を実施し,学習者にとって,与えられた負荷がどれほどのものであったかを捉える。必要に応じて学習者へのインタビュー調査を実施し,指導者の働きかけのあり方ついて検討する。
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Causes of Carryover |
令和4年度は,新型コロナウイルス感染症の影響により,日本各地の他大学の活動が従来通り実施されておらず,視察ができなかった。イタリアの劇場教育の視察へと方向を転換したが,令和5年度は,予定していた国内のいくつかの大学に視察に行き,学習者へのインタビューなど,調査を進めていく予定である。
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