2022 Fiscal Year Research-status Report
離島・へき地における持続可能な防災教育プログラムの開発及び実践研究
Project/Area Number |
22K02553
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
濱田 栄作 琉球大学, 教育学部, 教授 (20413718)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 防災教育 / コミュニティ防災 / 災害遺構 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去の度重なる震災の経験から,地域住民によるコミュニティ防災の重要性が指摘されているが,離島・へき地では,急速な人口減少や高齢化により,地域コミュニティ機能が低下し,防災の大きな障壁となっている。そのため,地域の学校には,防災の中心的な役割が求められ,子どもたちには災害時の避難誘導や避難所運営などのボランティアとしての活躍も期待され,防災教育の重要性は一層高まっている。本研究では,離島・へき地における防災教育の現状を調査し,地域が抱える課題を抽出するとともに,学校と地域住民が連携し,次世代につなぐ持続可能な防災教育プログラムを開発・実践する。 初年度は,防災教育の教材となる,東日本大震災や新潟県中越地震,阪神・淡路大震災に関する災害遺構を調査した。また,本研究の主なフィールドとなる沖縄県の石垣島付近で1771年に発生したマグニチュード7.4の地震がもたらした約30mの明和の大津波(死者・不明者数は約1万人)や,1960 年のチリ地震津波における自然災害伝承碑を調査し,教材データとして収集した。特に,宮古地域から八重山地域の島々に,大津波で陸に打ち上げられた岩塊(津波石)は,津波のすさまじい威力を知る自然の伝承碑であった。 離島の生徒に対し実施した防災に対する意識に関する予備調査結果を分析したところ,最も怖れる対象の自然災害は津波や地震,火山などの非常襲性の災害であり,常襲性のある台風については,怖れの意識は低かった。一方で,津波避難の際に重要な指標となる海抜については,約半数の生徒が生活圏(学校のグラウンド)の海抜の値を誤認しており,生活圏における空間的な認知の欠如が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,国内で発生した自然災害や,本研究の主なフィールドである沖縄県の宮古・八重山地域に多大な影響を与えた明和の大津波や,チリ地震津波における自然災害伝承碑を調査し,教材データを収集できた。また,地域(離島)の防災に関する認識について離島の中学生を対象に実施した予備調査結果を分析することで,地域における防災教育の現状と課題を抽出することができ,次年度以降の研究を効果的・効率的に進める準備が整った。特に,津波のような常襲性を持っていない災害の経験や教訓,知恵を,世代を超えて継承することは困難であり,そのためにも,学校における防災教育の充実や,地域の災害文化を継承に関する検討が喫緊の課題であることが明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に調査した教材および災害遺構より,地域特性にあった教材開発を行う。災害遺構の調査については,熊本地震や北海道南西沖地震についても対象を広げる。また,原子力防災など産業に関連する災害についても調査を行い,教材の開発にいかす。開発にあたっては,実際の教科等(保健体育,社会科,理科)での実践を通して,開発した教材を評価する。また,公開されている防災関連のゲームにも着目し,ゲームと学校教育の親和性についても調査を行う。さらに,地域防災に関する認知について本格的なアンケート調査に着手するとともに,必要に応じて地域の関係者に対しインタビュー調査を実施する 。 得られた成果については,学校現場における実践や教育系学会において積極的に発表し,成果を広く周知する。
|
Causes of Carryover |
データベースの整備にかかる謝金を計上していたが,初年度は研究代表者が実施したため人件費・謝金が発生しなかった。次年度以降で支出する。
|