2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K02562
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Research Institution | Hiroshima Bunkyo University |
Principal Investigator |
寺田 和永 広島文教大学, 人間科学部, 准教授 (80782416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津川 秀夫 吉備国際大学, 心理学部, 教授 (20330623)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | PBIS / スクール・コネクテッドネス / 学校適応 / 問題行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,我が国において導入と継続が可能なポジティブ行動支援(PBIS)の日本型モデルの作成と効果検討が目的である。これに向けて,令和5年は前年度に引き続きPBISを導入するA中学校の取り組みやその効果について下記の調査を実施した。 ①生徒の学校適応の縦断調査:生徒約900名を対象にして,スクール・コネクテッドネス尺度,ストレス反応尺度およびA中学校の取り組みへの認知や印象を尋ねる項目からなる質問紙調査を7月,12月に実施した。その結果,令和4年度の調査時同様にA中学校の取り組みに好意的な生徒ほど学校との結びつきが強いことが示された。 また,令和4-5年度に在籍する生徒の調査データを分析した結果からも取り組みに好意的な生徒の方が学校適応が高いことが示された。具体的には,2年を通して好意的に取り組む生徒は,学校適応を高く維持しており,反対に取り組みへの関与に乏しい生徒は学校適応が低いままであった。また,令和4年度に取り組みに消極的であった生徒であっても令和5年度に積極的であれば学校適応が上昇することが示された。 ②PBIS非実践校との比較:A中学校の取り組みの効果を検討するためにPBISの実践をしないA中学校の近隣中学2校の生徒にスクール・コネクテッドネス尺度を用いて7月および12月に調査を実施した。その結果,A中学校の方が,学校との結びつきが強いことが明らかになった。 ③教師の職場満足に関する質問紙調査および面接調査:A中学校の教師50名を対象に職場満足関する調査を8月と2月に実施した。その結果,令和4年度同様に,PBISの取り組みに積極的である教員ほど職場満足度が高くなるという結果が認められた。また,面接調査を5名の教師に実施した。その結果,A中学校のPBISの取り組みは従来のものと異なり発展しており,生徒が主体となって実施する様子が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度に予定していた,調査および面接調査を実施することができ,十分なデータを入手することができた。さらに令和4年度に得たデータをもとに,令和5年度は4件の学会発表を実施することができた。一方で,予定していたA中学校とは異なり,ポジティブな行動支援を積極的に取り入れる学校への訪問は,該当校との予定が合わず,次年度に持ち越しとなった。 以上から,多少の計画変更はあったが,概ね順調に研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られたデータは,見込みよりも多く入手することができた。また現在のデータの分析状況において,A中学校で実施されるPBISの効果について生徒や教師の観点から明らかにすることができた。そこで今年度は,引き続き得られたデータの分析を行うとともに,分析結果を論文にまとめ,学会発表および学会誌への投稿をおこなう。また,取り組みの効果とともに課題や限界を明確にし,本邦の学校文化に合わせたPBISのモデルを作成し,提案をおこなう。
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Causes of Carryover |
令和5年度は調査対象としているA中学校のほか,生徒のポジティブな行動に着目した支援をおこなう学校へ訪問し,実施状況について調査をおこなう予定であった。しかし,日程が合わず令和6年度に延期となったため未使用額が生じた。また,令和5年度に大会発表をおこなった学会のうち日本学校心理学会がオンライン開催であったため旅費が発生せず未使用額が生じた。 次年度は,延期となった学校訪問をおこなう予定である。
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