2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K02592
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Research Institution | Kagoshima Women's Junior College |
Principal Investigator |
内田 豊海 鹿児島女子短期大学, その他部局等, 准教授 (00585846)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 学びの個別化 / 数学教育 / 自由進度学習 / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、数学教育における「学びの個別化」を体系化し、その中で育まれる学びの様相を明らかにしようというものである。「学びの個別・協同化」は今まさに始まった教育実践であり、決まった授業の方があるわけではなく、現場の教師たちが試行錯誤しながら実践している。そこで、研究初年度は多くの実践校に足を運び、様々な「学びの個別化」の実践を体系化し、次の3つに大別した。 ①AI教材によって個別最適化された学び:Qubena等のAI教材を用いることで、生徒の学びに向かう姿勢が教師主導型の受動型から、自ら学ぶべき時に学びたいように学ぶという主体型へと変容した。学習内容をAIが提供し、各自のペースで躓くことなく学びが進められることから、算数数学科で多くの生徒が陥る自己肯定感の喪失を防げ、万人に一定以上の知識・技能レベルを保証できる学びである。 ②生徒が自ら計画を立て教材を選択して学ぶ自由進度学習:生徒が単元開始時に単元の学習計画を立て、それをもとに学びを進めていく。教材も生徒が選び、計画に齟齬が生じると、自分でそれを修正・改善しながら学びを進めていく。様々な学び方を試行錯誤しながら試すことを通し、生徒は自分に見合った学び方や教材を選択できるようになっていく。そこでは、生徒自身が学びを個別最適化し、学びに関する学びが生じている ③教師が単元の環境構成を行い、生徒が計画をたて学びを進めていく自由進度学習:教師が事前に単元全体の教材を創意工夫を凝らしながら用意し、それらを教室、時には教室外にも配置するような環境を構成する。生徒は、それらの教材をもとに、自ら学習計画を立て、学びを進めていく。教材は、様々な難易度が設定されており、また基本的に活動が主体となることから、生徒間の学び合いも創発的に起こる。換言すると、教師の設定した環境化で生徒の主体性が発揮されるいわば「中動態的な学習」が展開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R4年度は、研究初年度ということで、今まさに教育現場で実施され始めている「学びの個別化」の授業実践例を多く収集すること、そしてそれらを整理・体系化することを目指した。 先進的な取り組みをしている広島県、教育哲学に則った自習進度学習を試みている熊本市の教員、経産省の未来の教育プロジェクトの助成を受けAI教材を活用している学校、そして学びの個別化を試みようと試行錯誤をしている鹿児島の学校で聞き取り調査や授業参観を行い、事例を収集することができた。 それらの事例は、各学校や教師独自の試みであり、学びの個別化は学校現場から草の根的に波及していることが見ててきた。そこで、それらの個別事例の中から共通要素を抜き出すことで整理分類することが可能となり、その結果は上記の研究実績の概要の通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
R5年度の研究計画として、①学びの個別化の評価枠組みの作成、そのために②個別事例の比較検討と③生徒の学習活動の詳細な分析を行う。 学びの個別化は、上記のように3つに大別できる。一方で、それらは個別事象的に学校や教師が必要に応じ作り上げているものであり、分類上は同系統の授業でも中身は様々である。そして授業参観・分析を通し、うまく授業の目的に即した学びの個別化が行えている授業と、そうでないものがある。そのため、授業を比較検討し、学びの個別化の授業構成原理を構築することをまず行う。その過程で、生徒がどのように学習を行なっているかを詳細に分析する必要がある。学びの個別化における学習は、個々の生徒に依存しており、一つの授業でも複数の生徒の活動を捉え、形成的評価を行う。同時に、生徒の学習に対する教師の関与の仕方や教育観も授業参与、聞き取り調査をもとに行う。 それらを踏まえた上で、生徒観、教師観、教材観の3観点から、学びの個別化の授業を評価する枠組みを構築する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究は、研究対象校における授業参与観察が中心となり、そのための旅費として全ての予算を計上する。
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