2023 Fiscal Year Research-status Report
小学校体育科における体つくり運動の系統性学習指導モデルの開発
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22K02598
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
渡辺 敏明 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (90220904)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 小学校体育科 / 体つくり運動 / スポーツ運動学(発生運動学) / 運動アナロゴン / 促発指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は,前年度に引き続き,設計した系統性モデル教材(小学校低学年用)を小学校現場の体育授業において実践した。近年,コロナ禍において,特に低学年の児童の体力や運動の発達状況が大幅に低下している。加えて,早い時期から熱中症対策が必要となり,体育活動の中で給水時間を小まめに設けることや体調確認を行う必要が生じたため,コロナ以前よりも運動量の確保が難しくなっている。そのため,低学年領域の体系的な運動遊びとして構想したものの中から仲間との交流や日常的に取り組める運動遊びを選択・修正して再構成した(主に体つくりの運動遊び)。教材の有効性を検証するために,N県子どもの体力向上支援事業(小学校12会場)において低学年運動遊びプログラムの実践を行った。実践では,児童が運動に取り組む様子をVTR撮影し,各運動で出現する動き方,各運動に取り組む児童の様相,運動構成の適切性等について観察分析を実施した。次に,N県教員研修(小学校体つくり運動)において,プログラムの内容にプロトタイプ版教材を取り上げて実践した。講義では「運動発生以前の学習ステージ」「運動の意味や価値」を大切にする内容,実技では「動きが発生・発展していく様相」を体験する内容を中心に構成されるプログラムである。教員研修後のアンケート調査の結果から,講義では教材選択の視点を理解できた内容が確認され,実技においては運動アナロゴンのつながりや動感の発展可能性を理解できた内容が確認された。令和5年度の児童への実践,教員研修での実践における結果の整理・分析については,教材の有効性の検証とともに現在進めているところである。なお,令和5年度に発表した論文は,令和4年度における研究成果をまとめたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度は,引き続き新型コロナウイルス感染拡大状況下であり,当初予定していた一連の運動(プロトタイプ版教材)の内容及び構成を変更することに加えて,感染拡大防止策として3密を避ける必要が生じた。また,コロナ禍によってこれまでになく子どもたちの体力が大幅に低下している状況等(怪我の増加や,すぐに疲れてしまう等)が見られた。加えて,早い時期から熱中症対策が必要となり,体育活動の中で給水時間を小まめに設けることや体調確認を行う必要が生じた。それに伴って,新しい生活様式を踏まえた運動(遊び)となるよう選択・修正して構成したことで,当初考えた実践内容を子どもの実態に即して修正・変更せざるを得なかった。小学校現場での実践を通して,コロナ状況下における新しい生活様式をふまえた小学校体育授業のあり方を検討していくための情報を得られたことは大きな成果であるものの,十分な実践展開と検証ができたとはいえない。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍によって児童の運動経験が大きく減少していることから,これまでの想定よりも多くの運動アナロゴンを提供することや,より丁寧な運動の提示のしかたが必要である。そうした状況を踏まえ,これまで開発してきたプロトタイプ版教材を複数の学校現場において実践を行いながら修正・改善していく。また,系統性モデル教材(小学校低学年用)を確立させるために,小学校6年間における児童の身体や運動の発達を見据えた上で,中学年及び高学年用の系統性モデル教材の開発を行う。中学年用は,「動きの洗練化」,高学年用は「体の動きを高める(柔らかさ・巧みさ・力強さ・運動の持続)」ことに焦点化し,運動アナロゴンの視点から開発済の教材を,体つくり運動の授業における学習指導モデルとして選択・修正を行い,系統性モデル教材を作成する。その上で,N県教員研修(小学校体つくり運動)において取り上げて実践を行い教材の有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
令和5年度に未使用額が生じた理由は,研究計画の中で当初予定を組んでいた一連の予定が新型コロナウイルス感染症の影響によって中止せざるを得なくなり,国内の調査・研究の一部を次年度に繰り越すこととしたためである。
(使用計画)令和5年度で使用できなかった研究費を,令和6年度請求額に繰り越して,調査・研究のための経費として使用する。
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