2023 Fiscal Year Research-status Report
答えが一つではない道徳的な課題に向き合う道徳科授業の開発と検証
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22K02617
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山岸 賢一郎 福岡大学, 人文学部, 教授 (20632623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 篤 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (70634484)
宮川 幸奈 熊本学園大学, 経済学部, 准教授 (90806035)
杉原 薫 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (60610897)
岡野 亜希子 近畿大学, 産業理工学部, 准教授 (60457413)
有源探 ジェラード 玉川大学, リベラルアーツ学部, 准教授 (50535094)
藤田 雄飛 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (90580738)
塚野 慧星 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (70971191)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 道徳教育 / 特別の教科 道徳 / 道徳科 / 答えが一つではない道徳的な課題 / 考え、議論する道徳 / 教育哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「答えが一つではない道徳的な課題」に「向き合う」道徳教育の意味・意義・課題を精確に把握し記述しながら、それらを見据えた「考え、議論する」道徳科授業の在り方を具体的に提案することである。令和5年度は、従来の基礎的研究も踏まえ、主に以下のような理論的研究と応用・実践的研究を行った。 第一に、小学校教師へのインビュー調査に基づき、「考え、議論する」道徳科授業を実現する際の困難とそれを実現するための条件について論究した。第二に、よりよい行動方法を模索するための発問を中核とする道徳科授業が近年その重要性を増していることを指摘し、そうした授業が「考え、議論する」道徳科授業の一形態でありうることを明らかにした。第三に、道徳教育を通じて「震災の記憶」や「郷土への思い」を豊かなものにするための方途と課題を、N・ルーマンに基づく再帰的学習モデルを手掛かりに論究した。第四に、I・カントの『実用的見地における人間学』の内に、普遍的法則に従おうとする人間の姿とは異なる多様な人間の姿を見出し、それが道徳教育に与える示唆を探った。第五に、教育哲学研究の立場から、教育や学習の結果に過度に確実性を求めることのない道徳教育方法論の可能性を模索した。第六に、「ありのままでよい」ものというルソーの子ども観・教育観が、教育・道徳教育に与える示唆を探った。 上記の研究成果の一部は、九州教育学会が発行する『九州教育学会研究紀要』第50巻や、日本道徳教育学会が発行する『道徳と教育』第343巻などにおいて、論文として公表している。また、日本道徳教育方法学会第29回研究発表大会、九州教育学会第75回大会、日本道徳教育方法学会が公益財団法人上廣倫理財団の助成を受けて開催したフォーラムにおいて、口頭発表している。また、小中学校の教師との道徳授業に関わる意見交換の際には、これらの研究成果についても議論している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「答えが一つではない道徳的な課題」に「向き合う」道徳教育に関する理論的研究や応用・実践的研究の成果の一部を、学会発表・論文の形で公表することができたため。 ただし、理論的研究については、研究組織のメンバー各々の教育哲学研究・道徳教育学研究の成果を活かした論考を、よりいっそう積み重ねていく必要がある。また、応用・実践的研究については、小中学校教師の問題意識にも応えた道徳科授業の提案を、より具体的な仕方で行っていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的研究については、研究組織のメンバー各々が、各々の専門性を活かして、「答えが一つではない道徳的な課題」に「向き合う」道徳教育の意味・意義・課題に関わる論考をさらに積み上げ、学会での発表や論文の公表に繋げていきたい。 応用・実践的研究についても、小中学校の教師との道徳授業に関わる意見交換などを通じて、「答えが一つではない道徳的な課題」に「向き合う」道徳教育に関する事例やデータのさらなる収集に努めるとともに、そうした事例やデータの整理を行い、学会での発表や論文の公表に繋げていきたい。 そして、こうした研究の成果や従来の研究成果を整理・統合した上で、「答えが一つではない道徳的な課題」に「向き合う」道徳教育の姿を、より体系的な仕方で、理論的かつ応用・実践的に追究し提案していきたい。
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Causes of Carryover |
令和5年度も、学会参加や研究組織内外の意見交換等を、可能な場合はオンラインで行ったため。また、学校現場との日程調整の都合から実施を次年度に延期せざるを得なくなった調査が一部にあったり、インタビュー調査の文字起こしや調査によって得られたデータの整理等を調査者本人が行ったりしたため。 ただし、本研究課題の最終年度となる令和6年度は、令和5年度以上に、研究組織の内部での、また研究組織の外部との、対面での意見交換の場が重要となる。また、令和5年度に実施できなかった調査を実施する必要や、これまでに収集したデータを整理し精査していく必要もある。次年度使用額については、これらの用途に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)