2022 Fiscal Year Research-status Report
府県派出音楽伝習生と地方唱歌教育の研究ー学事諮問会を起点としてー
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22K02619
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Research Institution | Nakamura Gakuen University Junior College |
Principal Investigator |
松園 聡美 中村学園大学短期大学部, 幼児保育学科, 准教授 (20360323)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地方の唱歌教育 / 小学師範学科取調員 / 府県派出音楽伝習生 / 学事諮問会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は唱歌教育が地方において普及していく過程を明らかにするための端緒として、明治15年に各府県より開発教授法習得のため東京師範学校へ派遣された小学師範学科取調員(以下、「取調員」とする。)と、同年開催された学事諮問会の資料収集および整理を行った。具体的には、東京芸術大学附属図書館所蔵の音楽取調掛の「文書綴」のうち、東京師範学校と音楽取調掛、学事諮問会に関する史料を抽出し、東京師範学校や音楽取調掛での取調員の学習内容やカリキュラム、音楽取調掛と文部省や取調員の派出府県との往復文書、地方で先行する唱歌教育への関与の事例、学事諮問会における各府県学務委員の音楽取調掛参観時の記録や取調員の活動など、各項目別に分類し、解読を行った。また、東京師範学校の同窓会誌『東京茗渓会雑誌』や各府県師範学校の沿革史における取調員の関連記事を抽出するとともに、取調員の派出府県(岩手、宮城、福島、山梨、京都、岡山、広島、山口、高知、福岡)の公立図書館、文書館、資料館にて各取調員の閲歴に関する資料収集を行った。これらの資料に基づいて、地方唱歌教育の始まりにおける取調員の位置づけを検討し、これまでの成果と今後の見通しを日本音楽教育学会第53回大会にて発表(「音楽取調掛と地方における唱歌教育の萌芽」)し、意見を求めた。明治16年に東京師範学校、音楽取調掛での学習を終え、帰県した取調員は各地の師範教育に携わるが、地方の唱歌教育の普及においてどのような役割を果たしたのか、引き続き各資料の分析を通して検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度前半期は、新型コロナウイルス感染症の影響により各地方公立図書館、文書館、大学図書館等の開館時間に時間的制約があり、予定通り調査出張ができなかった。国会図書館や地方公立図書館等のオンラインサービスの活用を中心に資料収集を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
取調員は東京師範学校、音楽取調掛での唱歌学習後、各地方の師範教育において活躍した。帰県後の取調員の活動を詳細に検討することにより、地方唱歌教育の萌芽が明らかになるのではないかと考えられる。今後の研究の方向性としては、後の「府県派出音楽伝習生」募集までの過程を検討し、取調員の地方唱歌教育の普及における位置づけと展開を考察する。また、抽出した「文書綴」の解読を完了するとともに、各地方の行政文書や教育雑誌、地元新聞等、資料収集を行い、論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、今年度前半期は各地の公文書館、図書館の開館時間の時間的制約のため調査出張ができなかったことが大きな要因である。次年度は国立国会図書館を始め各地で調査を行う。経費については、「文書綴」抽出分の解読、および明治期の関連諸分野の情報収集の方法等、専門的知識の提供や指導を受けるため謝礼を必要とする。その他、関連文献を購入する。また、分析においては抽出した「文書綴」をPDF化して閲覧しているが、作業効率化のため、相応の能力を備えたPCを購入予定である。
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