2022 Fiscal Year Research-status Report
奨学金政策の効果測定への科学的実在論アプローチ:EBPMの認識論に関する研究
Project/Area Number |
22K02676
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西村 君平 東北大学, 理学研究科, 特任講師 (50757466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島 一則 東北大学, 教育学研究科, 教授 (70342607)
呉 書雅 福島大学, 教育推進機構, 特任准教授 (70880219)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高等教育 / EBPM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,科学的実在論に関する認識論的知見を土台として,奨学金政 策の効果測定のあり方を理論的・経験的に検討することで,奨学金政策に関する科学的 根拠の構築を推進するとともに,高等教育研究におけるEBPMの認識論的基礎を精緻化することとである。該当年度(令和4年度)は「課題1:科学的根拠の活用理論および科学的実在論に関する理論的考察」に取り組んだ。 その結果、高等教育研究における RCT への懐疑を踏まえて,RCT の方法論とは別の科学的認識論の観点から 1)エビデンスの特徴,2)その 構築の過程を明らかにすることである.本稿では科学的認識論に依拠した EBPM 論である「活用のためのエビデンス論」とその基礎にある科学的実 在論論争の知見を,高等教育研究への応用を視野に理論的に検討し、1)EBPM のエビデンスには,抽象度の異なる概念により構成された階層的な理論とその理論によって架橋された文脈の異なる多様な経験 的根拠が求められること,2)エビデンス構築のためには,理論の妥当性を その理論が構築されたときには想定されていなかった文脈において検証していく必要があることを明らかにした。また最後に高等教育の EBPM の課題とその解消の展望について、特に「素朴な実証主義」の問題性について明らかにした。この知見は日本高等教育学会紀要および大会発表に報告済みである。 また,科学的実在論に則った新しい研究デザインを奨学金政策の 効果測定に適用していくための準備作業として,次年度(令和5年度)に実施予定のアンケート調査のプレ調査も予定通り実施した(国内3大学,海外1大学でインタビューおよび小規模なアンケート調査を実施)。現時点で保有しているデータの分析等と総合し,大学紀要にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スケジュールの面のみならず研究業績の面でも申請時の予定通りに計画を実施できているから。ただし,アンケート調査やインタビュー調査をオンラインで実施したこともあって,研究費については繰越が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の実績をもとに,令和5年度については予定通り大規模アンケート調査を実施する。繰り越した予算については,アンケート調査に利用することで,当初の予定よりも量・質の両面で優れたデータを取得できるよう工夫する。
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Causes of Carryover |
主な理由はプレ調査(アンケート・インタビュー)や学会発表をオンラインで行ったため,予算に余剰が生じた。該当する予算については次年度の大規模アンケート調査に利用し,データの量・質の充実を図る予定である。
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Research Products
(5 results)