2023 Fiscal Year Research-status Report
多文化共修環境における意見積み上げ型対話能力育成のための教材開発
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22K02694
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
藤浦 五月 武蔵野大学, グローバル学部, 准教授 (30803663)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 話し合い / 積み上げ / 対話能力 / 多文化 / 共修 / 教材開発 / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多文化化が進む学びの場において、日本人学生と留学生が共に話し合いを行う場面を分析し、共修環境の話し合いにおける課題を解決するための教育プログラムを開発することを目的としている。中でも気づきと改善が難しい、意見を積み上げながら物事を検討・決定するスキルの習得を目指すものである。アイデア・意見を積み上げるスキルを育成のための教材(試用版)を、実際のデータ分析結果をもとに作成し、研究・実践を行っている。今年度も本教材を使用し、研究協力者らと共に改善を重ねた。2023年度は、留学生と日本人学生の話し合い場面の収録と文字起こしを完了した。また、前年度(2022年度)の課題であった、オンライン話し合い場面における沈黙について学会にて発表を行った。ディスカッションデータから、初回授業では、10秒以上の沈黙が35箇所(4グループ合計)観察され、対処困難な沈黙場面を多く抱えていたが、授業回を追うごとにそれらの沈黙箇所が減少した。回を追って沈黙を観察すると、他者の発言への反応「確かに…ですね」や、新しい観点の導入「…はどうしますか」といった、授業で扱った表現を活用している様子が観察され、沈黙解消の一助となっていることが窺えた。一方、誰もターンを取らない長い沈黙が続いた場面では、話し合いがどこまで進行したか合意や確認がないまま、次のステップに進んでしまうケースが観察された。発話を観察すると、議論が進んだあとに、アイデアを共有するタイミングから外れて意見が出され、前後の発話と噛み合っていなかった。これらのことから、意見がすぐに思いつかないときにどのように言うか、議論の流れの中で過ぎた地点に戻って言及したいときにどのように言うかといった、議論全体の流れをコントロールする表現にも注意を向け、練習を積み重ねる必要があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データの収集と文字起こしは概ね順調に進んでいるが、特に日本人学生と留学生の話し合い場面についてはやり取りの時間が長く、また様々なパターンがあり分析に時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
話し合い時のトラブルとして認識される長い沈黙に対する分析結果を試用テキストに反映させる。また、現在試用を重ねているテキストとテキスト実践から得られたデータについても、表現とアウトプットの関係を調査し、発表する予定である。共修環境の話し合い場面は、分析結果を発表し、結果をテキスト改善に繋げる。
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Causes of Carryover |
物品購入に関しては、昨年度の書籍・物品等を継続利用することとなったため追加購入が不要となった。また、データ分析の遅れにより、複数学会での報告ができなかったため旅費及び謝金の支出が減少した。次年度は、改善テキスト及び論文にまとめるための資料(物品)、国内学会・国際学会での発表(旅費・謝金)および、学習者・調査協力者へのフォローアップインタビュー及び改善テキストに関する検証協力(謝金)を予定している。
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