2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Cognitive Biases in Everyday Reasoning in Children with Hearing Impairments.
Project/Area Number |
22K02737
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
澤 隆史 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80272623)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 聴覚障害児 / 推論 / 日常性 / 数量推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、聴覚障害児が行う日常的推論の特徴や認知バイアスを実証的に検討することを目的とし、令和4年度は以下の3つの点について研究を行った。 (1)聴覚特別支援学校の児童を対象に容器内の事物の数を推定する課題を実施して、視覚的情報による量的推論への影響について聴児の結果と比較検討した。その結果、聴児は事物の見え方による推定に差がないのに対し、聴覚障害児は容器内の事物が部分的にしか見えない状況で誤差が増加することが示され、視覚的情報の呈示方法が推論に強く影響することが示唆された。(2)聴覚特別支援学校の児童を対象に、「少し」「たくさん」等の数量副詞の量感の推論について検討した。副詞を用いた文を呈示し、副詞が示す量感を描画および数値によって推定させる課題を実施し、聴者成人および聴児の結果と比較した結果、聴覚障害児は聴者成人や聴児とほぼ同様に量感推定を行うが、「いっぱい」「ちょっと」など相対的に強い量感を示す副詞において、より多い(少ない)推定を行う傾向があることが示された。(3)視覚的情報の処理に及ぼす聴覚的情報の影響について、聴者成人を対象とした実験的検討を行った。大学生を対象に、傾斜のある板の上を転がした球の数を推定させる課題を設定し、球が転がる際の背景音が球の数と整合する条件、整合しない条件、無音の条件で推定値の誤差を比較した。またその際に、眼球運動の計測を行い注視点の移動と推定値の誤差との関連を分析した。実験の結果、実際の球の数と背景音が整合しない条件において推定値の誤差が大きくなること、誤差が少ない対象者は視線の移動が頻繁に行われる傾向のあることが示唆された。以上の研究成果について、(1)の結果を論文として公表した。また(2)については令和5年度に開催予定の日本特殊教育学会第61回大会で発表する予定であり、(3)については研究紀要等にて論文として公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示した(1)~(3)の研究について、公表あるいは公表の準備が完了しており、令和4年度に予定した研究計画をおおむね遂行することができた。(1)で示した研究内容については、さらに日常生活での多様な状況に関する推論についての課題作成、データ収集を継続しており令和5年度中に研究を完了する予定である。また(2)および(3)の内容については、使用した課題の妥当性について検証した上で、新たな課題の作成に向けて準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、日常生活場面で遭遇しやすい状況における数量および時間の推定に関して2つの調査・実験を計画している。そのうちの1つについては、使用する課題の作成が完了し、データ収集もほぼ完了しており、得られたデータの分析ならびに研究成果の公表を予定している。もう1つについては、研究実績(1)で得られた結果を検証するために、刺激として写真や動画を用いた課題の作成とデータ収集を企図している。また視覚的情報処理に及ぼす聴覚的情報の影響に関する研究について、研究実績(3)で示した研究方法の課題を整理し、新たな課題による検証を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
当初予定していた人件費・謝金について想定した業務(データ分析等)が生じなかったため、支出がなかった。また物品の一部(視線計測装置のソフトウェア)の見積もりに誤差が生じた故、予定していた物品の一部を購入できなかった。次年度使用額については、物品(消耗品)の購入および謝金に充てる予定である。
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