2023 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症に併存する限局性学習症の病態解明とその支援法の確立
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22K02741
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
加賀 佳美 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (20436877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
軍司 敦子 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (70392446)
竹市 博臣 国立研究開発法人理化学研究所, 情報統合本部, 上級技師 (60242020)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 限局性学習症 / 自閉スペクトラム症 / 事象関連電位 / 視線解析 / 近赤外線スペクトロスコピー |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(ASD)では、そのばらつきの多い認知特性から学習のつまずきを示す例も少なくない。特にASDに読字障害(発達性ディスレクシア:DD)や書字障害が併存する場合があり、特異的な視覚認知特性が学習困難をもたらすというDD単独例とは異なる複雑な病態生理的背景が存在する可能性が考えられる。そこで本研究では、ASDの特殊な視覚認知機能に着目し、ASD特有の読字や書字障害の病態を明らかにし、学習困難状態の支援に役立てることを目的とする。 これまでに行った漢字課題を用いて事象関連磁場を解析した実験について、定型発達児(TDC)、及びDD児、ADHD併存のDD児について解析を行った。DD児では、ADHDの併存の有無にかかわらず側副溝後横領域posterior transverse region of the collateral sulcus (pCoS)で、200msec以降のM2活性がTDCと差に比べて有意に低くなっており、この活動は漢字書字の成績と正の相関を示した。すなわち書字能力にpCoSでの活動が関与しいる可能性が示唆された。次に刺激提示の作成のため、ASD併存のDD児に対して、書字特徴についての解析を行った。ASD併存のDD児では、そのアプローチに特徴を認めたためめがね型の視線追跡装置を用い、視線解析を行うとともに書字の行動が記録できるビデオ装置を使用することとし、現在装置の実証実験を行っているところである。 現在の問題点としては、動画の解像度のためか、全体的なアプローチを詳細に記録することが難しいことがわかった。ターゲットを大きくする、動画で捉えやすいように動きを記録するなど、試行錯誤を重ねている。また、他のバイオマーカー、脳波や近赤外線スペクトラオスコピーなどの併用も考慮中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は視線解析の方法を確立するため、様々な課題を作成して試験的に検査を行った。めがね型の追跡装置で、動画をとることによって経時的に視線解析を定量することが出来たが、計測の仕方によって再現性が乏しいなど、課題と解析の方法についてさらなる検討が必要である。そのため、まだ定型発達児のデータ採取には至っておらず、予定より行程は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
視線解析については、課題、解析方法を変えて試験計測を行っていく。課題の提示を拡大する、既存の課題を使用するなど検討中である。また事象関連電位については、成人でデータを蓄積し、その後定型発達児について検討を行う。事象関連電位の課題については、共同研究者の横浜国立大学、軍司敦子氏に、また視線解析方法については、理化学研究所の竹市氏に相談し、進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究の行程が遅れている。本来は50例程度の定型発達児のデータをとる予定だったが、データ集積の方法、および解析方法に問題が生じたため、現在、解析方法の見直しを行っている。そのためデータ採取を次年度に持ち越したため、費用として被験者に支払う謝金やそのデータを採取したり解析したりする補助者などの人件費などが使用できなかった。今後解析方法を確立し、データ収集、解析を進めていく予定である。
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