2023 Fiscal Year Research-status Report
口笛原理の解明による誰でもプロ並みに口笛を吹ける最適口笛吹鳴法の確立
Project/Area Number |
22K02912
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
森 幹男 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (70313731)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 口笛 / 声道 / 共振周波数 / MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会における生涯教育・健康法として,「誰もが持っている楽器」口笛の活用が期待できるが,口笛の教則本などには口笛の吹き方についての論理的で明解な記述は少なく,口笛音楽教室においても経験に基づく指導が試行錯誤で行われている。このことから,口笛の発音原理の解明が口笛音楽教室の指導者・生徒双方から期待されている。そこで本研究では,プロ口笛奏者に対して口笛吹鳴時のMRI(Magnetic Resonance Imaging)撮影を複数回行うことによって音高変化に伴う声道形状の変化を明らかにする。また,口笛を吹けない人に対しても口笛吹鳴時のMRI撮影を行うことによって口笛を吹ける人と吹けない人の声道形状の違いを解明する。これらのことにより,誰もが口笛を吹けるようになることが期待できる。 1.プロ口笛奏者1名と口笛吹鳴出来ない声楽家1名の計2名に対して行ったMRI撮影データを基に声道模型を構成し,計測を行った。 2.重音が発生する5種類のプレート構成の口笛声道模型を用いて同一の声道形状で発生する2音の基本周波数と口唇部における流速との関係を実験的に調べた結果,口笛声道模型における重音の発生条件が明らかとなり,口笛アンサンブルにおいて必要性が指摘されている500 Hz以下の低音を含む重音奏法の実現可能性が示唆される結果が得られた。 3.のべ8名の被験者に対し2種類の流量計を用いて口笛吹鳴時の呼気量の計測を行い,口笛声道模型に流入する圧縮空気の流量の妥当性を確認した。 4.成人男性5名に対し,電気インピーダンスの変化を利用して非侵襲的に声帯接触面積の変化を計測する電気喉頭図を用いて口笛吹鳴時における声帯振動の計測を行い,これまで声帯振動を伴わないと考えられていた口笛で,低音域から中音域において発生音と同じ周波数の声帯振動を確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度の目標は,下記2点であった。 (1)口笛吹鳴時の声道の3Dデータの作成 (2)口笛声道模型の作成 (1)については予定通り,2名に対し複数回行ったMRI撮影データから口笛吹鳴時の声道の3Dデータを作成した。そして,一部については3Dプリンタによる声道の3D造形も行った。(2)については予定通り,音高変化を考慮した口笛声道模型を作成してコンプレッサで模型に圧縮空気を流入し,発生する口笛音の基本周波数を測定して,計算で求めた理論値と比較した。 上記の通り,実験はほぼ順調で,達成度としてはおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は,令和5年度に得られた結果を基にして,予定通り下記のことに取り組む。 (1)口笛声道模型の改良 (2)最適化された口笛吹鳴法の解明 (1)については予定通り,MRIデータから得られた3Dデータに基づいた口笛声道模型と最適化された口笛声道模型を作製し,物理実験・理論的解析を行う。(2)についても予定通り,任意の直径の穴を空けた独自の厚さ5 mmのプレートを作製し,口笛吹鳴時の音量・音域に対して最適化した声道形状に可能な限り忠実な口笛声道模型を実現する。
|
Causes of Carryover |
(理由) 実験補助学生の謝金が予定より少なく済んだことと,出張を別の予算から支出したことなどにより次年度使用額が生じた。 (使用計画) 実験補助学生の謝金と出張旅費に使用する予定である。
|