2022 Fiscal Year Research-status Report
機械学習による教職志望学生の理科実験安全意識の追跡に関する研究
Project/Area Number |
22K02913
|
Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
串田 一雅 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80372639)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜澤 武俊 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (60283842)
堀 一繁 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30314446)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 理科実験安全教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸・塩基の中和実験(高校化学基礎)において実験開始から後片付けまでの間の生徒の挙動や実験室内の様子を撮影・編集した動画を用意した。この動画には、安全確保の観点から危険な兆候であると研究代表者らが判断した個所に、実験時の危険な行為や兆候を問う設問が挿入されている。これを本研究ではICT教材と呼ぶ。 こうして作成したICT教材を、授業「学校安全」において受講者に視聴させ、動画中の上記の設問に回答させた。このICT教材の視聴時間および回答時間は、合計で15分程度である。また、これらの設問に対する回答は、コンピューターを利用した教育・学習活動支援システムであるMoodleのフィードバック機能を利用し集計される。その後、集計データに対してルーブリック評価を加え、各回答者の得点を算出するとともに、統計処理を行った。なお、このルーブリック得点は、回答者が、どの程度、研究代表者らの実験安全上の経験知を追体験できたかを表す指標となる。さらに、上記の授業において、理科実験安全に関するコンセプトマップを作成させた。なお、受講者は、授業の前後でそれぞれ一枚ずつコンセプトマップを作成する。コンセプトマップの作成により、実験安全に関する考え方を視覚化することができると考えている。 上記のルーブリック評価における得点と受講者の属性との関連、およびルーブリック評価における得点とコンセプトマップとの関連を、2022年度日本教育大学協会研究集会において発表した。また、これに関する発表報告が、日本教育大学協会研究年報(41巻159-162ページ、2023年)に掲載されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度、本研究で使用するICT教材を作成し、授業「学校安全」において使用することができた。具体的には、酸・塩基の中和実験(高校化学基礎)の実験開始から後片付けまでの間の生徒の挙動や実験室内の様子を撮影・編集した動画を用意した。この動画中には、実験時の危険な行為や兆候を受講者に問う設問が挿入されている。 また、これらの設問で構成されるアンケートの実施・集計を行う仕組みを、教育・学習活動支援システムであるMoodle上に作成することができた。さらに、集計したデータに対するルーブリック評価項目も作成し、回答者である受講生の実験安全に関する感覚を得点として可視化・指標化できるようにした。 さらに、受講者の実験安全に関するルーブリック得点に関するデータ解析を行うためのワークステーションを購入し、使用するアプリケーションのセットアップまで行うことができた。なお、セットアップ作業は、このワークステーションの製造販売元であるコンカレントシステムズ株式会社に依頼した。セットアップ費用はワークステーションの代金に含まれている。 最後に、データ収集の場として、授業「学校安全」を確保することができた。この授業で収集したデータを用いて、受講者のルーブリック評価における得点と受講者の属性との関連、および、ルーブリック評価における得点とコンセプトマップとの関連を、2022年度日本教育大学協会研究集会において発表することができた。また、この発表は特に興味深いとされ、日本教育大学協会研究年報(41巻159-162ページ、2023年)に発表報告として掲載されるに至っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
授業「学校安全」に限らず、研究代表者および研究分担者が担当する授業(例えば、学生実験科目、実験デザインプロジェクト科目)において、上記のICT教材をより多くの受講者に視聴させ、動画中の上記の設問に対する回答を収集し、ルーブリック得点化することで、より多くのデータ(受講者の実験安全意識を指標化したと考えられる)を集める予定である。このようなデータは、研究代表者らの実験安全上の経験知を、どの程度、追体験できたかを表す指標であることから、今後も多くのデータを収集する必要があると考えている。 さらに、上記の授業において、理科実験安全に関するコンセプトマップを作成させる。コンセプトマップは、実験安全に関する考え方を視覚化することができるため重要である。特に、同一回答者のルーブリック評価点の推移、コンセプトマップの変化を追跡し、データの推移傾向の分析、データのグループ分けを行う。この目的のために、Tensor Flow &Pythonを使ったディープラーニングを用いる予定である。 また、コロナ禍がひと段落したため、理科において最も事故リスクの高い化学実験の安全教育実習を再開する予定である。また、事故対応訓練の一環として消火器試用訓練も再開する予定である。 上記の研究成果を、日本理科教育学会誌「理科教育研究」等、最適と考えられるジャーナルへの論文投稿を行う予定である。特に、米国物学会誌「Physical Review Physics Education Research」や米国物理教育学会誌「The Physics Teacher」への投稿・掲載を目論んでおり、その際、昨今の動向に鑑みて論文のオープンアクセス化を考えている
|
Causes of Carryover |
授業「学校安全」に限らず、研究代表者および研究分担者が担当する授業(例えば、学生実験科目、実験デザインプロジェクト科目)において、研究代表者らが用意するICT教材をより多くの受講者に視聴させ、受講者の実験安全意識を指標化したルーブリック得点データをより多く集める必要がある。つまり、このようなデータは、研究代表者らの実験安全上の経験知を、どの程度、追体験できたかを表す指標であることから、今後も多くのデータを収集する必要がある。 さらに、上記の授業において、理科実験安全に関するコンセプトマップを作成させる。コンセプトマップは、実験安全に関する考え方を視覚化することができるため重要であると考えている。そして、このようなコンセプトマップは画像データであるため、画像データを効率よく処理する必要がある。そのためには、メモリ容量として32GB、GPUとしてGeForceRTX3060以上を搭載するコンピューターが必要である。これは、汎用の事務作業用のパソコンとしての購入ではなく、あくまでも、当該研究に必要な画像処理用のコンピューターとしての購入である。この購入費用には、約50万円程度必要となるため、次年度使用額が生じた。
|