2022 Fiscal Year Research-status Report
球根類花卉における球根生産技術と球根成長のメカニズムを学ぶための教材開発
Project/Area Number |
22K02965
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
神田 啓臣 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (90224881)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オーニソガラム / 実習教育 / 花き栽培 / 炭水化物代謝 / りん片培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
オーニソガラム属花きにおける球根成長のメカニズムを明らかにすることを通じて、「種苗生産の技術」と「その基礎となる球根成長の生理的機作」の両者を結びつけた教材を開発することを目指した。 まず、シルソイデス種における球根掘上後の炭水化物代謝を検討した。シルソイデス種の促成栽培では、球根に「休眠打破のための高温処理」を施した後に、「花芽分化・成長促進のための低温処理」を行うが、これらの処理に伴って球根内で可溶性糖含量が変化しているかどうかを調べた。その結果、①休眠打破処理によってスクロース含量が高まった。②低温処理によってフラクトースとグルコースの含量増大がみられた。この結果から、休眠打破の過程では、貯蔵養分である不溶性炭水化物(デンプン等)の分解が進み、その後の花芽分化・成長過程では、不溶性炭水化物あるいは二糖類の分解が進行して成長のためのエネルギー源になっているものと考察された。 次に、実験実習科目へのダビウム種のりん片培養の導入を行った。栽培期間中である3月に蕾切除処理(摘蕾)を行って、6月に球根を掘り上げた。その球根から調製したりん片を、MS培地と市販肥料培地(微粉ハイポネックス)に植えて培養した。その結果、①掘り上げた球根は摘蕾によって重くなり、りん片の厚みも増した。②培養の結果については、「摘蕾あり」+「MS培地」で最も良好となった。「市販肥料培地」の場合、「摘蕾なし」で最も劣った結果となったが、「摘蕾あり」では改善がみられた。以上のことから、①摘蕾を行えば、市販肥料培地でも実用性のあるりん片培養が可能となること、②その原因として、摘蕾によって球根への光合成産物の転流が促進されること、を学ぶ教材になり得ると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シルソイデス種の球根の炭水化物代謝については、炭水化物の抽出操作の途中で機材のトラブルが原因と思われる異常なデータ(数値)が一部で得られた。研究実績への記載内容は、このデータを除いたものなので、再実験が必要である。 ダビウム種のりん片培養については、栽培と培養の時期の都合により、受講者には培養を体験してもらうことはできたが、栽培段階に携わることができなかった。このため、「単子葉植物の摘蕾」という作業のイメージや、「球根が肥大する」という現象を把握しづらかったようであった。今後は、①光合成産物の転流をイメージしやすくするために、摘蕾(シンクの除去)に加えて摘葉(ソースの除去)も組み合わせる、②球根肥大を理解しやすくするために、摘蕾時期や開花時期の球根の様子も学ぶことができるようなしくみをつくる、といった工夫が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
シルソイデス種の球根の炭水化物代謝については、進捗状況に記した通り再実験を行うとともに、①不溶性炭水化物の変化も調べることで、研究実績に記載した考察の確認を行う。②今回の研究実績では球根内のりん片部分を材料としたが、オーニソガラム属の球根(りん茎)の場合、球根の茎盤部が出芽・出根部分となるので、この部分での炭水化物の消長も調べる。 ダビウム種のりん片培養については、栽培段階と培養結果とが密接に関わっていることを理解しやすくするために、進捗状況にも記載した通り、以下を授業に導入する。①摘蕾と摘葉を組み合わせた4処理区から得られたりん片を培養する。②摘蕾時期や開花時期も含めた経時的な球根肥大の様子を補足資料として示す。 また、ダビウム種の球根肥大過程での炭水化物代謝を明らかにするために、摘蕾・開花・掘上などの各段階における炭水化物含量も調べる。
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Causes of Carryover |
この金額は、主にダビウム種の球根肥大とりん片培養に関して使用する予定であった。既述の通り、今年度の進捗に不十分な面があったため、次年度も引き続き検討する必要が生じた。この金額は、次年度の検討において使用する予定である。
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