2023 Fiscal Year Research-status Report
教室内実験を志向した可搬型原子発光測定システムの開発とアクティブラーニング
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22K02990
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中釜 達朗 日本大学, 生産工学部, 教授 (50244421)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | マイクロプラズマ / 原子発光検出 / 教室内実験 / アクティブラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,化学教育における実現象の観察と理論学修を直結し,より深い学びを実現するために,マイクロプラズマを照射する測定ユニットを備えた可搬型原子発光スペクトル測定システムを構築し,化学教育において実験を取り入れたアクティブラーニングを試行することを目的とする。 前年度に教室内実験を志向した可搬型原子発光スペクトル測定システムを開発した。このシステムは市販の小型コンピュータ数値制御(CNC)フライス盤の三次元的位置制御機能を利用し,①薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート設置用ステージ,②マイクロヘリウムプラズマ照射・採光ユニット,③プラズマガス供給・制御ユニット,④プラズマ生成用電源ユニットおよび⑤分光ユニットから構成している。①は前後方向に,②は左右および上下方向にそれぞれCNC制御できる。⑤には小型CCD分光器を含む発光測定用高分解能分光システムを使用している。 本年度はまず,このシステムをTLC用検出システムとして適用した。測定対象物質には特徴的なUV吸収や蛍光を有さないクロロブタノールと4-クロロ-1-ブタノールを用いた。これらの測定対象物質の混合溶液をTLCプレート上に担持し,展開した後に開発したシステムに設置し,TLCプレート上をマイクロプラズマで走査しながら911.95 nmの原子発光を検出した。その結果,両物質の塩素選択的検出を1分程度で達成できることがわかった。しかしながら,開発した測定システムではプラズマガスの至適流量が350mL/minと比較的多く,教室内実験を志向する場合には可搬性を考慮して消費ガス量を削減する必要がある。そこで,②のユニットにおけるプラスマ照射部を可能な限りプラズマガス雰囲気下にする改善を行った。その結果,含塩素化合物の塩素選択的検出において1/10のプラズマガス消費量で同程度の感度を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発した測定システムは原子発光スペクトルの取得や測定対象物質と発光強度との直線的相関などが確認できている。教室内実験の実現にはさらなるプラズマガス消費量の削減が必要と考えるが,測定結果を動画などで記録すれば,アクティブラーニングへの展開は可能な状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,教室内実験を実現するためにプラズマガス消費量のさらなる削減とともに,システム自体の軽量化を行う。並行して,開発したシステムにより得られる情報を用いたアクティブラーニングを設計,実施する準備を行う。実施科目としては,リュードベリの式や発光スペクトルを取り扱う無機化学系科目か,スペクトル分析を取り扱う分析化学系科目を予定している。
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Causes of Carryover |
当該年度は開発を担当する学生が効率的に研究を行うことができたため,消耗品の購入を控えることができた。次年度は分光器のメンテナンスが必要となるため,次年度に繰り越して使用する予定である。
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