2022 Fiscal Year Research-status Report
高精度に仕事関数を測定できる物理実験教材の実現と学校現場での活用実践
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22K03000
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
大向 隆三 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40359089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 一史 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40178421)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 仕事関数 / 物理実験教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
高校や大学で利用できる光電効果実験教材の開発を目的に、我々が独自に提案している中空陰極ランプを用いた仕事関数測定法の実用化を狙っている。R4年度は今までにこの方法で実施例のないカリウム(K)を対象として仕事関数の測定を試みた。特に、従来までの我々の研究手法とは異なり、市販のランプ、すなわちバッファガス(Ne)が封入されたランプを用いて、放電した状態での測定を行った。市販の製品を使用して仕事関数を測定できることが示されれば、我々の仕事関数測定法の汎用性を主張でき、技術的メリットを強くアピールできる。 実験ではハロゲンランプからの出力光をバンドパスフィルターに通して単色化し、ランプ陰極へ照射した。ランプに印加する電圧は100Vから600Vまで、100V刻みで変えた。印加電圧100Vでは放電しないが、バッファガスがランプに封入されているので200V以上では放電した状態であった。単色光の波長を420nmから650nmまで変化させ、光の照射によって生じたランプ電極間のインピーダンス変化をロックイン増幅器で検出した。 実験の結果、すべての印加電圧でKの仕事関数は1.71eVを超えることはなかった。光電子分光法で測定されたKの仕事関数は2.29eVと報告されていて、20%程度小さな値となった。しかし、この実験で得られた光電効果信号強度の波長依存性は、量子効率を勘案したモデルとよく一致していた。 今後、この不一致の原因について実験方法の妥当性も含めて物理的な考察を深める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回の仕事関数の測定結果と従来の測定結果との間に無視できない差が生じていて、この原因について明らかにする必要がある。得られた結果の再現性や、実験方法に不備がなかったかどうかを当面検証しなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、Kでの実験結果の考察が最優先となる。(1)仕事関数自体が陰極に含まれる不純物の影響で変化している、(2)何らかの測定方法の不備により正しくない実験結果が得られている、(3)ランプの特性として考慮しなければならない因子が実験結果に影響を与えている、の3つの可能性について検討することになる。 この原因が明らかになれば、さらに他の元素へ我々の測定方法を適応し、仕事関数を求めることができるかどうかを検証する。当面は仕事関数が比較的小さいアルカリ原子を対象とする予定である。市販のランプを使用することを前提にする。従って、放電が光電効果信号にどのような影響を与えるかも詳しく調べなければならない。元素に応じて生じる影響、元素にかかわらず生じる影響の両方について精査する。
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Causes of Carryover |
従来とは異なる種類のランプを使用しての実験となったため、実験配置の再検討や安全確保、実験スペースのコンパクト化などにも取り組んだ。そのため当初の想定以上に準備時間が必要となり、研究進捗のスピードも遅れた。次に進めるはずの実験に未着手となったため、その実験で使用する物品(光学部品、測定機器)の購入がR5以降に回さざるを得なかったことが主な原因である。 R5年度には研究のスピードを加速させ、購入していない物品と、本来R5年度に購入する予定の物品を両方とも購入し、助成金をそれに充てる予定である。
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