人間視点で考える裁判官AIのシルエットー人間が人間を裁く意味の探究―

2022 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 22K03022
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 綿村 英一郎 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (50732989)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 藤田 政博 関西大学, 社会学部, 教授 (60377140)
• Project Period (FY): 2022-04-01 – 2025-03-31
• Keywords: 人工知能 / 法廷 / 刑事裁判 / 信頼 / 共感

Outline of Annual Research Achievements

人工知能の法廷への応用は研究者たちの熱い視線を集め続けてきた（e g., Aletras et al., 2016）。医療診断や自動運転などの分野で成功裏に進められてきた先端的な試み，Chat GPTのようなOpen AIの社会的浸透を鑑みるに，人工知能が法廷で活躍するその時代はそう遠くないかもしれない。本研究では，（１）裁判官のいかなるアビリティを人工知能に実装すればよいのか，（２）人工知能が法廷に導入されることに対して社会は受容できるのかという2つの問題に対する探究を行う。
2023年度は（１）の検討に向けた下準備と（２）に関する実験を行った。さらに，他分野における人工知能の研究についての資料収集を行った。（１）の裁判官のアビリティを抽出するには，裁判官と一般市民の判断を比較し，その判断プロセスを可視化することが有益である。そこで，この年度は裁判官サンプルの確保と，少ないサンプルでも検証可能な調査計画を考えた。（２）の実験では，ロボット裁判官の動画を用いた実験を行った。他分野の研究から示唆されたことは，共感と信頼の関係性であった。具体的には，（例外はあるものの）人工知能が人に共感的なパフォーマンスを見せると人工知能が信頼され，受け入れが促進されやすかった。私たちの実験では，共感的なロボット裁判官を見たときの一般市民の反応を調べた。その結果，予測どおり，共感的なロボット裁判官に対する人々の信頼は高く，その判決に対する評価も高かった。プロジェクトの初年度ということもあり，刊行された形の論文は残せていないが，2023年度末の時点で投稿は済ませている。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ロボット裁判官に関する実験を2つ完了し，うち1つは論文としてまとめることができた。残り1つも執筆中である。さらに，2つの実験結果から着想を得た実験計画についても，研究分担者と協議し，進めている最中である。

Strategy for Future Research Activity

2023年度前半まではロボット裁判官の実験を続ける予定である。年度の後半からは（１）の裁判官のアビリティに関する調査を行う。また，2023年10月に開催予定の「法廷と人工知能」に関するシンポジウムを機にプロジェクトの中間整理を行う。

Causes of Carryover

裁判官を対象にした研究に関して，サンプル数が確保できず，遅れが発生した。その代わりに，必要なサンプル数を確保するための準備を整えることができた。翌年度は様々な切り口で一般市民との比較を試みたい。また，殺人ほう助罪など，機械学習にかけるには事例が少ない罪についての比較も行いたい。