2023 Fiscal Year Research-status Report
A Research on the Influence properties of team virtuality levels on teamwork processes.
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22K03033
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山口 裕幸 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50243449)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | team processes / team virtuality / team communication / hybrid teams / action research / psychological safety |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の2年目となる2023年度は、企業を中心とする組織現場における行動観察、インタビューを基盤に質問紙調査項目を精査し作成し、それを活用した測定活動を推進した。コロナ禍の沈静化に伴い、高いバーチャリティを伴って運営されていた組織のチーム活動が、次第に低いバーチャリティのもとでの活動へと推移する現実を踏まえ、同一組織を対象に、複数回の調査を実施し、バーチャリティの変化が、チームメンバーのモチベーションやワークエンゲージメント、チームワーク行動、さらには心理的安全性等のチーム・ダイナミクスにもたらす影響を測定し、分析を行う活動を進めた。なお、この調査活動は、企業と協同して現場の問題解決を図るアクション・リサーチのアプローチを採用したものも加えた。これは、時系列的に2回の調査研究を実施する狭間の期間に、チーム・コミュニケーションの活性化活動を組織で実施する形をとる現場実験の性格を持つ取り組みである。 これらの実証研活動の結果、低下しているとはいえバーチャリティは組織におけるチーム・コミュニケーションに不可欠の特性になっていることが明らかになった。そして、時間や労力の低減によるクオリティ・オブ・ワークライフの改善というポジティブな影響はあるものの、発言のタイミングのとりにくさ、合意のとりにくさ、堅苦しい発言ばかりへの偏り、孤立感、チームの心理的安全性の低さといったネガティブな影響も明らかにされ、功罪両面が確認できた。さらには、出社する割合が増え、対面コミュニケーションも行うハイブリッド型へとチーム・コミュニケーションの形態が変容していることで、上記のネガティブな影響は軽減する方向にあることも分析結果は示していた。 こうして得られた研究成果は、国際学会および国内学会で発表するとともに、論文にまとめて投稿を行い、一部は採択され、公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3つの目標を基軸に推進している。まず第1に、チームのバーチャリティの高低によって、メンバー(個人)レベルのワーク・モチベーションやワークエンゲージメント、職務満足感、チームワーク行動、さらにチームレベルの心理学的創発特性である心理的安全性や共有メンタルモデル等にいかなる影響が及ぼされるのか、実証的に明らかにすることである。1年目に引き続き2年目の本年度も、組織現場の問題解決活動と協働しつつ進める行動観察やインタビュー、質問紙調査を行って、この取り組みを推進することができている。 第2の目的は、上記の組織現場を対象とする調査研究と、変数間の理論的関係性を明らかにする実験研究とを相互循環的に行うアクション・リサーチを行なって、これらの実証研究で得られるエビデンスに基づき、組織現場で急速に進むチーム・バーチャリティの高まりがもたらす影響について検討することである。昨年度、企業組織との協力関係の基盤を形成し、本年度は、理論的に検討したチーム・コミュニケーション活性方略活動を組織現場で実践して、その活動の前後で質問紙調査を行い、活動の効果性を確認し、問題解決に生かしていくことに取り組んでいる。 さらに第3の目的は、アクション・リサーチを推進し、その成果に基づいて、バーチャリティ水準の影響を考慮した効果的なチーム・マネジメントのあり方について検討し、具体的な実践方略の提言を行うことである。すでに試行的な取り組みに着手して、一定の成果を上げている。課題は、組織現場にとってチーム・コミュニケーション活性化に向けた期待値の高い実践プログラムの開発である。その実現に向けて検討を進めている。 社会環境の変化に強く影響を受けつつも、本研究は着実に歩を進めており、3年計画の終了時点で有益な研究成果の獲得に向けて順調な進捗状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画の最終年となる2024年度は、バーチャル・チームを実践している組織現場における行動観察とインタビュー、意見交換を行って精緻に構成した質問紙調査を活用し、チーム・コミュニケーションにおけるバーチャリティーの高低の程度、オンラインと対面のコミュニケーションの両方を活用するハイブリッド化の程度が、メンバーレベル、チームレベルのチーム・プロセス特性に及ぼす影響について、理論的検討と実証科学的検討を相互循環的に実施するアクション・リサーチを引き続き実践する。研究代表者の異動に伴う研究環境の変化を考慮して、実験室実験に拘泥せず、組織現場で実験を行う工夫を取り入れていく。すでにある企業組織において、チーム・コミュニケーションの実態を時系列的に測定する基盤作りを進めており、理論的検討に基づく実証研究に歩を進める予定である。 さらに、最終年度であることを意識して、研究成果の公表および社会実装の活動に注力する。これまでに得られた成果は国内学会、国際学会で発表を行い、論文化も行っているが、さらに今後の研究で得られる成果をまとめて、国際ジャーナル・国内学会誌をはじめとして、専門書の執筆、各種学術メディアでの執筆等を行って、社会に広く成果を知らせ、理解されることを目指す。また、組織現場の管理者と研究成果を基盤にした組織開発のあり方について議論する機会を設け、実際に具体的な改善策を提示し、実践して、その効果を検証していく取り組みを進めていく。
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Causes of Carryover |
年度当初、調査活動、行動観察活動は、大学院生の研究補助者を雇用する計画であった。しかし、研究の協力組織の現場セキュリティ強化の影響で、部外者が長期にわたって現場に入って調査活動を行うことが難しくなった。このことを受けて、組織現場の窓口担当者と協議を重ね、大学院生を補助者とする調査活動ではなく、組織現場の各部署のリーダーに協力を得る形で行う調査の実施形態を具体的にプログラム化して実施することにした。その結果、WEBを活用して質問紙調査を行う形で行うことになり、物品費および人件費・謝金の費目での執行はないかわりに、WEB調査費用(費目・その他)の執行へとスライドした。なお、本年度は、国際学会での研究発表に伴う旅費が高騰したこと、オープンアクセスの国際ジャーナルへの論文投稿に際しての英文校閲料や掲載費用等が高額にのぼることを考慮して、慎重に予算執行を図った。そして、年度終盤でAIを活用して組織現場のチーム・コミュ二ケーションのプロセス測定を行う機器のリース使用を計画した。しかし、調査実施スケジュールについて現場と協議して調整の結果、次年度実施することになったため、結果的に未執行になってしまった。ただ、既に実施の具体的な打合せは進んでおり、次年度分の助成金と合わせて計画的に適切に執行していく予定である。
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