2022 Fiscal Year Research-status Report
イマジネーションが利他的行動を促進する効果の神経科学的検討
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22K03035
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
青木 隆太 東京都立大学, 人文科学研究科, 特任准教授 (50751103)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
傷ついている他者を目にすると情動的共感が喚起され,利他行動(援助行動)が促進されることが過去の社会心理学的研究により示されている。このことは逆に,困難な状況におかれた他者が時間的・空間的・社会的に遠い距離に存在しその苦痛を直接目にすることがない場合,彼らにとって必要な援助が(時に社会的なレベルで)集まりにくいことを意味している。本研究は,自己からみた心理的距離が遠い他者に対する利他行動を,イマジネーションを誘起する実験的操作によって促進できるか否かを,経済ゲーム(意思決定課題)および脳イメージングを用いて検証することを目的としている。研究計画の初年度である2022年度は下記の知見を得た。 健康な大学生54名に対して実施したfMRI実験のデータを解析したところ,他者視点を想像する条件に割り当てられた参加者では,コントロール条件に割り当てられた参加者と比較して,社会的意思決定の際に他者の利得を考慮に入れて選択をおこなう度合いが増加していた。脳賦活データの解析では,社会的意思決定において重要な役割を果たすことが示唆されている脳領域のうち,特に他者視点取得やイマジネーションに関わるとされている側頭頭頂接合部(TPJ)と認知的制御に関わるとされている前頭前野背外側部(dlPFC)を関心領域とした。その結果,他者視点想像群ではコントロール群と比較してTPJの賦活は増大していたが,dlPFCの賦活には群間差はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
他者の視点を想像することによる利他的な意思決定傾向の増大が,イマジネーションや心の理論に関与する脳システム(default mode network)の一部であるTPJの賦活と関連することを示唆する結果を得たため。
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Strategy for Future Research Activity |
脳賦活データの解析を進め,イマジネーション・他者視点取得・反事実的思考の重複と乖離を検証するための新たな実験をデザインする。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響を受けオンサイトでの学会参加を控えたため。次年度への繰り越し額は大規模オンライン行動実験等で使用することを検討している。
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