2022 Fiscal Year Research-status Report
個人と関係の幸福を促進する感染予防行動とその心理プロセスの解明
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22K03037
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
宮崎 弦太 学習院大学, 文学部, 准教授 (80636176)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 感染予防行動 / マスク着用 / 向社会的動機 / 主観的幸福感 / 自己利益志向的動機 / 他者の評価の懸念 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な大流行によって、私たちの日常生活には感染予防行動が欠かせなくなった。COVID-19の発生から3年が経過し、感染拡大防止のための行動制限は緩和・撤廃されたが、日本では感染予防行動が高い頻度で行われている。本研究の目的は、マスク着用という感染予防行動と、私たち自身や私たちが親密なつながりを持つパートナーの幸福、そして、パートナーとの関係の幸福との関連について、感染予防行動における動機という観点から検証することであった。 2022年度は、感染予防行動を行う者の主観的幸福感と特に関連すると考えられる「マスク着用の向社会的動機」について、その動機を他の2つの動機(自己利益志向的動機と他者の評価の懸念)と弁別的に測定するための尺度を作成し、信頼性と妥当性を検証することを目的としていた。そのために2つの調査を行った。調査1aでは、マスク着用の向社会的動機についての項目を新たに作成するため、「自分以外の誰かのためにマスクを着用した」理由について、自由記述回答を求めた。調査1aの回答から作成された項目を、宮崎(2022)の尺度の項目に追加し、感染予防行動としてのマスク着用の動機尺度を作成した。 調査1bでは、作成した尺度の信頼性と妥当性を検討した。その結果、マスク着用の動機尺度は、想定どおり、3因子構造であることが示され、いずれの下位尺度についても高い信頼性が認められた。加えて、マスク着用の向社会的動機は、特性的な向社会性と正の関連があるとともに、主観的幸福感の指標とも正の関連があることが示された。このようなパターンの関連は、マスク着用の他の動機では認められず、向社会的動機に独自のものであった。 以上の結果は、本研究で作成したマスク着用の動機尺度の信頼性および構成概念妥当性を示すものであったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、2022年度に、本研究課題で使用する感染予防行動としてのマスク着用の動機尺度を作成し、その信頼性と妥当性を確認することができた。2023年度以降の研究で、この尺度を用いて研究を進めていくことが可能になったため、本研究課題についておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年5月に、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症になり、マスク着用という感染予防行動を行うかどうかは、個人の判断に一層委ねられるようになった。マスク着用が個人の選択で行われるようになったことで、その行動を行う際の動機はより重要になると考えられる。そこで当初の計画どおり、2023年度は、まず、マスク着用の動機の個人内での変化が、主観的幸福感の変化とどのように関連するかを縦断調査によって検証する。次に、マスク着用の動機が本人だけでなく、親密なパートナーの幸福およびその関係の質とどのように関連するかをペア調査によって検証する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、2022年度にノートPCを購入しなかったためである。2023年度は2つのWeb調査を計画しているため、次年度使用額は調査の委託費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)