2022 Fiscal Year Research-status Report
自己制御機能にもとづくPre-crastinationモデルの構築
Project/Area Number |
22K03042
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
安達 未来 大阪電気通信大学, 共通教育機構, 准教授 (50733789)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Pre-crastination / 先延ばし / 自己制御 / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,2014年に新たに提唱されたPre-crastinationの概念(身体的コストをはらってでも,すぐにタスクにとりかかろうとする傾向)に対し,自己制御の観点からそのメカニズムを明らかにすることである。社会人を対象にしたアンケート調査を実施し,タスクに取り組む順序を尋ね,それらと自己制御の個人差との関連を検討した。自己制御の個人差として,勉強時間,飲酒の程度,喫煙の程度,金銭管理,食事管理,攻撃性,行動抑制システム (Behavioral Inhibition System,以下BIS),行動接近システム (Behavioral Activation System,以下BAS)を測定した。その結果,日ごろから好きなタスクから取り組む人は,嫌いなタスクから取り組む人よりもセルフコントロールが低いこと,一方で,嫌いなタスクから取り組む人は,好きなタスクから取り組む人よりもBIS傾向が高いことが示された。この結果から,Pre-crastinationの規定因の一つとして自己制御がある役割を担っている可能性が示唆された。嫌いなタスクから取り組む人は,将来のことを予期し行動する点で,自己制御が高く,同時に罰への敏感さ(BIS傾向)に関連づけられる。今後は,Pre-crastinationを測定する尺度を開発し,パーソナリティ,環境・状況要因との関連を明らかにしていく。 加えて,Pre-crastinationという概念の定義は,実験的操作にもとづく知見により示されたものである一方,日常生活場面や場面を想定した実験的手法からの知見は少ない。現在は,場面想定法を用いてPre-crastinationの実態を明らかにし,より密接にわれわれの生活に関連する概念であるかを検証し,概念の定義を再考,もしくは拡張的理解を深める段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に挙げた通り,アンケート調査から得られた知見を国際論文に提出することができた。また,当初の研究計画にはなかったが,Pre-crastinationに対する新たな実証的知見が蓄積されつつあるなかで,実験的操作だけでなく,日常生活場面を想定してもらい回答を求める場面想定法を用いることで,概念の再考やさらなる理解につながる知見が得られると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本邦におけるPre-crastinationの概念の定義を再考し,尺度開発による測定を計画している。また,好きなタスクからとりかかるか,嫌いなタスクからとりかかるかが,パーソナリティや状況要因とどのように関連するのかを,Pre-crastinationの知見をもとに実証し,効率的なタスクの進め方についての実践的提言をまとめる。
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Causes of Carryover |
旅費について,一部オンライン開催となったことから,すべてを学内研究費で支給することができた。また,研究におけるWebでの調査を想定範囲より低価格で実施できた点が挙げられる。
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