2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K03050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清河 幸子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (00422387)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自己/他者 / 問題解決 / 推敲 / 言語化 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1では,自分が作成したのか,他者が作成したのかという違いが意見文のわかりやすさの評価および推敲コメントに及ぼす影響を検討した。大学生128名が,はじめに「選択的夫婦別姓制度」に関する意見文作成課題に取り組んだ。その後,半分の参加者は自分が作成した意見文が呈示される自己評価条件,残り半分の参加者は他の参加者が作成した意見文が呈示される他者評価条件に割り当てられ,「何を伝えたいか理解できる」,「説得力がある」,「わかりやすい文章である」の3つの観点から意見文を評価した。さらに,その意見文の問題点や改善点を記述した。その結果,自己評価条件に比較して他者評価条件で意見文のわかりやすさの評価が高かった。また,推敲コメントに関しては,「表層的レベル」と「ミクロレベル」では条件間に有意な差がみられなかったが,「マクロレベル」のコメントは他者評価条件で有意に多かった。以上より,同じ文章であっても,自分が作成したのか他者が作成したのかという違いによって,わかりやすさの評価や推敲の観点が異なり,推敲時にはより俯瞰した観点がとられることが示された。 研究2では,数学的な洞察問題と非洞察問題を用いて,自分の思考を言葉にすること(言語化)が問題解決に及ぼす影響を検討した。321名の日本語母語者が,自己向け言語化条件,他者向け言語化条件,統制条件のいずれかにランダムに割り当てられ,1分間,問題に取り組んだ後,各条件の教示に従い,言語化を行った。その後,再び同じ問題に2分間取り組んだ。その結果,他者向け言語化条件において,他の条件よりも解決率が有意に高いことが示された。以上より,言語化であっても誰に向けて行うのかによって効果が異なり,他者に向けた場合には問題解決が促進されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定通り,他者のアイデアを参照することが創造的問題解決に及ぼす影響を検討した(研究1)。ただし,当初予定していたアイデア生成課題から意見文作成課題に変更するとともに,アイデアの内容によって生じる効果ではなく,評価対象となる意見文を「他者のもの」と捉えること自体の影響について検討した。現在,論文化を行っており,2023年度内に採択されることを目指している。 上記に加えて,他者に向けて自分の思考を言語化することが問題解決に及ぼす影響を検討した(研究2)が,これは当初の計画には含まれていないものであった。この成果は,2023年7月にシドニーで開催されるCognitive Science Societyの年次大会でポスター発表をすることが決定している(Full paperでの採択)。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,既にデータの収集が完了した研究に関しては成果発表を行う。具体的には,研究1を論文化し,投稿を行う。研究2については,Cognitive Science Societyの年次大会で発表を行い,そこで受けたコメントを参考にしつつ,論文化を行う。次に,研究1および2で得られた促進効果を高める条件の特定に関わる研究を実施する。当初の計画に新たな研究が追加されていることから,実験補助者を雇用して対策を講じる。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際学会への出席が出来ず,旅費を使用しなかったために繰越金が発生した。その分については,今年度,当初予定していた学会に加えて,もう1つ国際学会に参加をすることで使用する。
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