2022 Fiscal Year Research-status Report
嗅覚刺激訓練法における自伝的記憶の想起介入効果の検証と認知症予防プログラムの開発
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22K03092
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
山本 晃輔 大阪産業大学, 国際学部, 准教授 (60554079)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 自伝的記憶 / 嗅覚訓練 / 加齢 / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は次年度の実験で主な認知機能測定の指標となる嗅覚同定能力検査キットOpen Essenceを用いて,嗅覚同定能力と自伝的記憶における加齢の影響を検討することが主目的であった。実験では,若年者30名,高齢者29名を対象に,Open Essenceによって嗅覚同定能力を測定し,その検査キットの香りを刺激とした自伝的記憶の想起課題を実施した。実験後,Open Essenceの成績をもとに,若年者と高齢者をさらに同定能力の高い群と低い群に分けて,記憶の特性にどのような違いが生じるのかについて検討を行った。その結果,若年者では同定能力が高い群がそれが低い群よりも記憶の鮮明度が高くなったが,高齢者では同定能力の高低群間に記憶の鮮明度の違いが確認されなかった。また,嗅覚同定能力低群では若年者が高齢者よりも鮮明な記憶を想起したが,高群ではその差が確認されなかった。これらの結果から,若年者と高齢者では,嗅覚同定能力と自伝的記憶における加齢の影響に違いがある可能性が示唆された。次年度実験ではこのことに留意をしたうえで嗅覚訓練実験を行う必要がある。この成果は論文化され,Journal of Japan Association on Odor environmentに審査の結果,採択された。 また,次年度実験で使用予定の高齢者のための嗅覚刺激によって想起される自伝的記憶の機能尺度を開発した。この尺度は「ポジティブ感情の喚起」,「アイデンティティ」,「コミュニケーションの促進」,「ネガティブ感情への対処」の4因子から構成され,その信頼性および妥当性が示唆された。この成果は日本パーソナリティ心理学会で発表され,論文としてFrontiers in Psychologyに審査の結果,採択された。関連する研究発表も含め,2022年度の学会発表件数は計7件であった。また,学術論文としてJournal of Human environmental studies,Aroma Research等に計5編の論文が採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおりの実験を実施することができた。関連研究も含めて,学会発表7件であり,またその一部を5編の論文とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の基礎データにもとづき,次年度では高齢者を対象とした嗅覚訓練法のオンライン実験を行う。また,成果の一部について積極的に学会発表,論文化を行う。
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Causes of Carryover |
参加者プールのご配慮で,ボランティアで実験参加頂けたため,その分余剰金が生じた。この分次年度のオンライン実験では参加者を増加して実施する予定である。
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