2022 Fiscal Year Research-status Report
a study of the multi-dimensional assessment of pathological beliefs, and the influence of meta-cognition
Project/Area Number |
22K03096
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石垣 琢麿 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70323920)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 病的信念 / 多次元アセスメント / メタ認知 / 強迫観念 / 妄想 / 自己否定的思念 / メタ認知トレーニング / 面接法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、精神疾患の病的信念を調べるための多次元面接法Nepean Belief Scale(NBS)の日本語版を作成し、強迫症の強迫観念、統合失調症の妄想、うつ病の自己否定的信念、および健常者の思考を比較することを目的としている。 原著者のBrakoulias教授(シドニー大学)の指導のもと、NBSの日本語訳は完成した。現在は各精神疾患の病的信念に関する信頼性と妥当性を確認するため、研究協力医療機関において調査が開始されている。特に統合失調症に関しては、2023年中に目標の被験者数に達する可能性が高くなった。一方、強迫症とうつ病、および健常者(対照群)に関しては調査がやや遅れている。 統合失調症を対象とした調査の途中経過を分析したところ、NBS日本語版も十分な再検査信頼性と評価者間一致率を示している。また、客観的症状評価の得点や、自記式の妄想尺度であるPDI得点との相関も高く、十分な臨床的妥当性を有していることが推測される。 現在のところ、本研究における統合失調症の被験者の年齢は、急性期のpsychosis入院患者を対象にした先行研究(Rajendran et al., 2023)よりも高い。したがって、本研究の被験者は慢性期にある人が多いと考えられるので、Rajendranらの報告と簡単に比較できないが、これまでの分析結果から考えると、NBS日本語版は慢性期統合失調症の妄想の評価にも有用であることが示唆される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記したように、統合失調症に関しては目標被験者数を達成できる可能性が高まっているが、強迫症とうつ病、および健常者に関しては被験者募集がやや遅れているので、スピードを上げる必要がある。ただし、研究全体としては時間的余裕を持って計画を立てているので問題ないと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.統合失調症の妄想、強迫症の強迫観念、うつ病の自己否定的信念、健常者の思考の間でNBS日本語版の結果を多次元的に比較検討する。 2.統合失調症の妄想に関するNBS日本語版の信頼性と妥当性が確認されたのちに、統合失調症を対象に開発された「メタ認知トレーニング」の実施前と実施後において、妄想がどのように変化するかをNBSを用いて調査する。メタ認知トレーニングによる介入によって、統合失調症の症状のなかでも特に妄想が改善することが知られている(Sauve et al., 2020)。しかし、妄想が改善するとは、その信念のどの次元が改善することを意味するのかがまだわかっていない。NBSを用いた縦断調査によって、妄想の変化の精神病理的な側面だけでなく、さらに有効な介入への示唆が与えられると考える。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が発生したのは、今年度は研究協力者のトレーニングが中心となっており、被験者の募集が十分進んでいなかったこと、国内学会もオンラインが中心で旅費が発生しなかったこと、物品購入が少なかったことなどが理由である。 次年度は、被験者も昨年度より確実に増え、予定されている被験者数150人に近づく。分析用コンピュータ等を含む物品購入と、対面形式の学会も増えるので、予算を確実に使用できると考える。
|
Research Products
(4 results)