2023 Fiscal Year Research-status Report
カウンセラーの視線運動と感情認識―遠隔カウンセリングにおける顔の情報処理過程
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22K03104
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
佐伯 素子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (80383454)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 感情認識 / 視線運動 / 感情特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
双方向リアルタイムの遠隔カウンセリングが実施されることも多くなり,遠隔による心理支援のニーズは高まっている。遠隔の場合,モニター上の映像は首から上が多く,非言語情報は対面による面接よりも少なくなる。限られた非言語情報から,いかにクライエントの感情を認識し,共感的に関わるのかが問題となる。そこで,架空カウンセリング場面におけるクライエントの表情動画に対する研究対象者の視線運動をアイトラッカーにて測定し,視線運動と感情認識,感情調整との関連及びカウンセリング熟達者と初学者の視線運動を比較検討し,熟達者の視線運動の特徴を明らかにすること,本研究の目的である。 令和5年度は,感情を表す表情静止画に対する視線運動実験を実施し,その成果を国内学会にて公表した。表情における感情認識の手がかりとして,目,鼻,口は重要な部位であるが,感情特性によっては,それら部位の注視時間は異なる。例えば,高共感者は低共感者と比較して,目と口の領域へ定位するまでの時間が短く,注視時間も長いとされている。多次元からなる共感特性では,各特性傾向によっては感情認識の際の視線運動が異なる可能性が考えられた。そこで,本年度は,情動的共感の構成要素である個人的苦痛傾向が高いほど,感情認識の手がかりとなる領域の注視時間が短くなると考え,個人的苦痛の表情刺激に対する視線運動を計測した。その結果,個人的苦痛の高得点者では,顔全体への注視時間は長いが,目領域は短く,目領域への注視を避ける傾向が顕著であった。個人的苦痛が高い者は,ネガティブ感情を回避する傾向を示している可能性を示唆するものと解釈された。一方,書学者と熟達者では視線運動に違いは認められなかった。対象者数が少なく,個人差も大きいため,今後も対象者数を増やし,引き続き検討していく必要が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画は,令和5年度に表情静止画に対する視線運動の実験を実施し,その結果をまとめることであった。研究計画通りに,静止画を研究対象者に呈示し,目,鼻,口,それ以外の領域に分け,アイトラッカーにより領域ごとの停留時間,視線移動先領域,視線移動距離を計測し,その結果をまとめ,公表した。また,令和6年度に行う動画刺激に対する視線運動実験に向けた準備を進めている。当初の研究計画通りに進んでいる。しかし,表情静止画に対する視線運動計測実験の対象者数が不十分であったため,今後も表情静止画の視線運動実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は,引き続き表情静止画に対する視線運動実験を進めるとともに,動画刺激に対する視線運動実験に向けて,架空カウンセリング場面の動画作成を行う。実験協力者募集を積極的に行い,対象者を確保し,動画刺激に対する視線運動実験を実施する。また,視線運動と感情認識との関連に影響を及ぼす特性の質問紙調査の結果をまとめ,公表する。
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Causes of Carryover |
結果公表した学会がオンラインによる開催であったため、余剰金が発生した。令和6年度は、対面学会での発表を予定しているため、旅費に使用する。また、動画刺激作成や実験協力者への謝金等で使用する予定である。
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