2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K03201
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
畑 敏道 同志社大学, 心理学部, 教授 (50399044)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | インターバルタイミング / 時間評価 / ラット / 神経基盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下の2つの実験を行った。実験1ではピークインターバル手続きを用いて20秒の時間の長さの記憶を形成させた後,両側の背側線条体にグループI代謝型グルタミン酸受容体阻害薬であるAIDAを投与下し,課題要求時間を40秒に変えてピークインターバル手続きでの訓練を継続した。その結果,時間の長さの記憶の指標であるピークタイムは統制群と同程度に40秒に向かって長くなる一方で,群間に差は見られなかった。その後,薬物は投与せず,無強化試行のみで構成されるプローブセッションにおいても,群間の差は得られなかった。我々の先行研究では,神経可塑性に重要な役割を果たしているイオンチャネル型グルタミン酸受容体であるのNMDA型受容体の阻害によっても,時間の長さの記憶形成が阻害されないことが示唆されてきた。これらのことは,同部位のイオンチャネル型・代謝型グルタミン酸受容体のいずれもがが時間の長さの記憶獲得において重要な働きをして「いない」ことを示唆している。一方,実験2では背側線条体のコリン作動性介在ニューロンを神経毒によって選択的に損傷し,時間の長さの記憶形成に与える効果を検討した。実験1と同様の手続きで20秒の記憶を形成させた後,あらかじめ背側線条体に埋め込んでおいたカニューレを介してコリン作動性ニューロン選択的神経毒を投与し,同ニューロンを損傷した。数日後,課題要求時間を40秒に変えてピークインターバル手続きでの訓練を継続した。その結果,統制群のピークタイムは40秒に向かって長くなった。一方,損傷群ではそのような移行は起こらず,20秒付近にとどまった。プローブテストでは,統制群のピークタイムは引き続き20秒よりも有意に長かった。一方,損傷群では20秒と有意差は見られなかった。これらのことは,背側線条体のコリン作動性介在ニューロンが時間の長さの記憶形成に重要な役割を果たしていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,代謝型グルタミン酸受容体の役割について,背側線条体と海馬で検討することとしていた。背側線条体では予定通り研究を遂行した。一方海馬に関する実験は行わなかった。これは,これまで用いてきた課題は獲得に長期間が必要なので,今後の研究を効率的に進められない懸念が生じたためである。そこで,獲得に要する期間が短いとされる課題(DRRDスケジュール)の使用を検討し,この課題の特性を理解し,速やかな課題の獲得を行わせるために,課題の最適化を試みた。このプロセスは継続中であるが,最適なパラメータが見つかれば,これまでを上回るペースで研究を進めることが期待できる。これらのことから,研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな課題の有効性が確認されれば,同課題を用いて背側線条体および海馬などで,グルタミン差やコリン作動性神経系等の役割を検討する実験を行う予定である。
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Research Products
(3 results)