2022 Fiscal Year Research-status Report
正則シンプレクティック多様体の射影モデルと退化の研究
Project/Area Number |
22K03240
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永井 保成 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50572525)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 代数幾何学 / モジュライ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,9月と3月の2回,ドイツMainz大学のManfred Lehn氏を招聘し,既約シンプレクティック多様体の射影モデルに関わる研究を共同で行なった.特に,アーベル曲面から作られるいわゆる一般クンマー型の既約シンプレクティック多様体の射影モデルを,アーベル曲面の上のテータ関数と結びつけて記述する方法について,Gruson-SamやBenedetti-Manivel-Tanturriの外積3ベクトルの表現論と関連する重要な研究があり,これを用い,また発展させて一般クンマー型の既約シンプレクティック多様体の射影モデルのより一般的・包括的な記述を得る方法について討議・検討した.宇都宮大学で3月に行われた研究集会に参加し,関連する最近の研究動向について調べ,また参加者と討議を行なった. アーベル曲面の導来圏は,その自己同値群の記述も含めて,それ自体としてはほとんど完全に理解されていると言って良いが,反面,射影モデルの幾何学と結びつけ,半直交分解の観点から導来圏を切り出す方法については知られていない.K3曲面に関しては,半直行分解との関連からの研究が近年盛んである.一般クンマー型の多様体の記述問題は,アーベル曲面の射影モデルと導来圏の問題と当然関係があるから,導来圏の観点からも研究を進めていくべきである.アーベル多様体の上のテータ関数やテータ群の表現の理論をどのようにして三角圏の半直交分解の枠組みに持ち込んでいくかを検討した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題研究はまだその初期の段階にある.ここ数年新型コロナウイルス感染症の影響で停滞気味であった,共同研究者のLehn氏との討議が充実してきたことから,検討すべき課題がかなり明確化してきたことは,本研究課題全体の進行にとって非常に有意義なもので合ったと考える.具体的成果に直接・即物的に結びつく結果が得られている段階ではないが,研究の進行状況は概ね良好であると言ってよいと思う.
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,イタリアミラノで行われる代数的シンプレクティック多様体・モジュライ空間に関する年1回の研究集会に参加し,情報収集やこの分野の研究者との交流討議を行う予定であるほか,9月にはドイツ・マインツ大学にLehn氏を訪問して,共同研究の更なる進展を図る予定である.今年度はより具体的な問題設定を確定させ,これを解決していく方向に進んでいきたい.
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で,当初予定したよりも研究集会への出席・他大学への出張などの活動ができなかったため繰越を行った.感染症対策の規制が緩和され,今年度は多くの渉外活動を予定しているので,繰越金はその目的に使用していく.
|