2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K03245
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
谷川 好男 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 招へい教員 (50109261)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 数論的関数 / 数論的誤差項の平均値 / ディリクレ級数 / 解析接続 / ペロンの公式 |
Outline of Annual Research Achievements |
数論的誤差項 E(x) に対し,E(n) を係数とするディリクレ級数 D(s,E) の解析的な性質(解析接続,極とそこでの留数,Im(s) に関する増大度等)の情報を用いて E(n) の平均挙動を調べるというのが当該研究の目的である.2022年度は主に次の2つの場合を考察した. (1) E(x)がピルツの約数関数の総和に対する数論的誤差項のときにはイヴィッチの先行研究がある.ただ3次の場合に彼の議論にはヴォロノイ公式の使い方に間違いがある.我々は新しい方法で E(n) の正しい平均値を3次の場合に導いた. また4次の場合にはイヴィッチの結果を改良することができた. この結果は研究協力者とともに論文としてまとめ,現在投稿中である. (2) E(x) が一般化された約数関数の総和の誤差項の場合, 当初の準備的な計算に少し誤りがあった.特に D(s,E) の表示の中に現れる積分を, 後の評価に使える形で解析接続する部分に問題があり,その訂正に多くの時間を費やした.問題の本質を理解するために, 約数和の場合を集中的に行った.生成関数には変数にずれがあるため, 現れる積分の評価が難しかったが, 積分のうちで最大のものについて, 約数の逆数和に関する有限ヴォロノイ型の公式に相当するものを示すことができ, その形から指数和の評価に帰着させ, E(n) の平均として cx^2+O(x^{249/194})を示すことができた.ここで c は定数である. 更にこの結果と古典的なディリクレの hyperbola method を組み合わせ,P_2(x/n) の n が x までの和が c'x +O(x^{55/194}) と評価されることを示すことができた.ただし P_2(x) は2次の周期的ベルヌーイ関数である.これらの誤差項の評価は現在知られているもののうちで最良のものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一般化された約数関数の総和の誤差項の平均について,当初の準備的な計算に誤りを見つけ, それを訂正するのに多くの時間を費やしたのが遅れた理由である.約数和の場合を主に考察したが,最終的には, 新しい方法でE(n) の平均を様々な積分で表したとき,最大になる積分を約数の逆数和に関連した有限ヴォロノイ型の級数として表現でき, 指数和の計算に帰着させた.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は2022年度の継続として次のことを研究する. (1) 約数和の総和の誤差項の平均値についてある程度見通しが立ったので,もっと一般的に約数のべき和の場合に進む. ただ2022年度の経験から, 新しい方法のみに固執せず,新しい方法と従来のhyperbola method を柔軟に組み合わせていくのがよいと思われる.特に今年度は, 本研究の当初の課題である整数をいくつかの2乗和に表す表現数の挙動を調べるために, 約数和, 及び約数の2乗和の場合に, 約数に合同条件を付けて誤差項の平均値を求める. (2) 約数関数のconvolution の誤差項の平均値を求める.いろいろ文献を調べたところ,約数関数 d(n) の convolution については, 保型形式のスペクトル理論による研究が多数あることが分かったので,スペクトル理論も勉強したい.ただ誤差項の平均はまだなされていないから,我々の方法で評価を出し,スペクトル理論と比較したい.さらに Ramanujan 予想と関係のある約数のべき和の convolution に進みたい.
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Causes of Carryover |
2022年度も新型コロナウィルスの流行と個人的な体調不良のため, 研究打ち合わせのための出張があまりできなかった.現時点ではコロナウィルスも落ち着いてきている様子なので, 研究協力者との研究打ち合わせを積極的に行い, 補助金を有効に活用させていただきたい.
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Research Products
(1 results)