2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K03248
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
浦本 武雄 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 助教 (40759726)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 類体論 / 代数的言語理論 / Witt vector / 決定可能性 / CM体 / Siegel modular variety / 志村相互律 / 変形理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者のこれまでの研究で虚二次体K上の代数的Witt vectorが,Fricke関数族(上半平面上のモジュラー関数族)の特殊値から自然に構成されるmodular vectorによってK上生成されることを示していた(modularity theorem).本研究課題の本年度の取り組みでは,その結果の自然な続編として,特に以下二つの結果を成果として挙げる事ができる.
第一に,石塚裕大氏(九州大学),木村巌氏(富山大学)との共同研究(2021年度のIMI共同利用研究の後続研究)において,任意の類数の虚二次体上の代数的Witt vectorがいつintegralになるかの決定可能性を証明し,その判定アルゴリズムを与えた.類数1の場合は,石塚氏との共著論文として既にSCSS2021で提出していたが,その後,任意類数に拡張した.
第二に,研究集会に呼んでいただいたことをきっかけとして,しばらく前に観察していたCM体へのmodularity theoremのある種の拡張の結果をまとめる機会を得て,証明等を整理した.技術的には楕円曲線をアーベル多様体に置き換えmodular vectorの類似をCM体に対しても構成し,どの代数的Witt vectorがmodular vectorから生成されるかを(ガロア対応を通して)特徴付けている.この観察の結果として,より一般の志村多様体上のモジュラー関数の場合への拡張や,非可換化に向けた方向性がより詳しく見えてきた.CM体の場合は,より一般の場合に向けた中間報告のようなものとして論文にまとめることを予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
虚二次体上の代数的Witt vectorのintegralityの判定に関しては,石塚氏,木村氏に議論の時間をいただき,プレプリントを作成する必要ができたことで,任意類数への拡張の研究がすぐに済んだ.
CM体への拡張については,特に2023年3月に開催されたLow Dimensional Topology and Number Theory XIVへ呼んで頂いたことが本研究をまとめる良い機会になった.
虚二次体の場合のmodularity theoremを証明していた時点で,CM体への拡張の方針をある程度見定めてはいたものの,それで満足して特にまとめることはせず他の問題を主に考えていた.しかし上記研究集会で発表することになり,話せる内容をまとめる必要が出てきたことで,CM体の場合の観察について真面目に考えることにして観察結果を整理しまとめた.実際詳細を書き進めていくとより詳しい幾何的背景に気づき,より一般的な拡張・或いは変種に至るための方針など,色々と見えてくるものも出てきた.その意味ではCM体の場合の結果をまとめることは,より展望を広げる意義もあり,過渡的な結果として位置付けられる.研究集会で発表する機会がなければ,しばらく別の(結果が出るか全くわからない)問題に気を取られ,論文執筆が遅れていたかもしれない.
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Strategy for Future Research Activity |
第一の研究について,石塚氏と木村氏との共同研究ではintegral Witt vectorの理論的な記述を与えることが最終的な目標であり,数値実験により例を構成することでその予想を定式化できる可能性がある.尤も,代表者はこれまで計算機を使わない純粋数学的な研究を行ってきた.もし数値実験なしでintegral Witt vectorの理論的な記述を与えることが可能そうであれば,数値実験自体には必ずしも拘らない.もしintegral Witt vectorの理論的記述の予想を立てるために数値実験を実施することになった場合は,アルゴリズムの効率化も必要になると思われる.
第二の研究について,CM体の場合にmodularity theoremをある意味で拡張したが,これは志村多様体の言葉で言えばSiegel modular varietyの場合の結果とみなせる.また虚二次体の場合もCM体の場合もmodularity theoremの証明に志村相互律を使うが,modularity theoremは志村相互律の変形版であると言える:志村相互律はgalois共役なmodular関数の特殊値を関連づけるが,modularity theoremは必ずしもgalois共役でない(異なるlevelに属す)modular関数の特殊値を(合同で)関連づける.志村相互律がより一般の志村多様体で成立することから,Siegel modular variety以外にもmodularity theoremを拡張できるだろうと見ている.また関連文献のうちで,本研究の非可換化のために参考になるだろうと思われるものに現在注目している.
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Causes of Carryover |
少額の差額が出たため.
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Research Products
(1 results)