2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K03273
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
黒田 茂 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (70453032)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 多項式環 / 自己同型群 / 順自己同型・野生自己同型 / 正標数 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)正標数の体上の多項式環の自己同型の野生性に関する問題の研究を行った.基礎体の標数が0の場合に多項式環の野生自己同型が存在することは,2003年にShestakov-Umirbaevによって証明された.しかし,正標数の場合の野生自己同型の存在はまだ証明されていない.Shestakov-Umirbaev理論では,「次数不等式」を基礎に「簡約の理論」が構築され,「簡約の理論」の帰結として自己同型の野生性判定条件が得られる.しかし,「次数不等式」は解析的な手法を基礎とするため,これを正標数の場合に拡張することは,実際にそれが可能かどうかという点も含めて大きな問題であった.今回,研究代表者の従前の研究に,新たなアイディアを取り入れることで,懸案だった「正標数版の次数不等式」を構成することに成功した.また,それを用いて「簡約の理論」の再構築に取り組んだ.現時点で「正標数版の簡約の理論」はまだ完成していないが,「正標数版の次数不等式」を使うことで,多項式環の自己同型のかなり詳細な分析が可能であることが判明している.この方向の研究を完成させることが,次年度の重要な課題である. (2)標数0の体上の多項式環の自己準同型は,ヤコビアンが非零定数ならば順自己同型によって近似できる(Anickの定理).これは多項式環の自己同型に関する基本的な結果として広く知られているが,同様の主張が正標数の場合に成り立つかどうか不明である.今回,Anick型定理の正標数版の構築に向けた研究に取り組み,「加法的自己準同型」の場合に成果を得た.この結果はまだ拡張の余地があると考えられるため,次年度にさらなる改良を行ったうえで公表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
懸案だった「正標数版の次数不等式」の構成に成功したため.
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Strategy for Future Research Activity |
正標数の体上の多項式環の野生自己同型の存在証明を目指し,2022年度に構成した「次数不等式」を用いて「自己同型の簡約の理論」の構築を進める.また,Anick型近似定理については,結果を改良したうえで,論文にまとめて公表する. 研究の進捗状況を見ながら,海外の研究者との情報交換などを行う.
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Causes of Carryover |
研究の進展状況を考慮しながら研究活動を進めたことや,新型コロナウイルスの影響で制約があったことなどから残額が生じた.次年度も,目的達成のために効果的な方法を検討しながら研究を遂行していく.
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