2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K03281
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野 肇 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70467033)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | アインシュタイン-調和方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
アインシュタイン方程式は幾何学、および物理学(重力理論)において最も重要な偏微分方程式の一つである。微分幾何学において主に扱われるアインシュタイン方程式は物質場を伴わないものであるが、重力理論においては物質場を考えることが極めて自然である。本研究は物質場付きのアインシュタイン方程式の解の存在問題、および、その幾何学的性質を、ケーラー多様体や佐々木多様体の複素幾何的情報を基に解明することを目的とする。
本年度は次の結果を得た:物質場としてリーマン多様体上の微分形式を考え、アインシュタイン・ヒルベルト汎関数と物質場のL^2ノルムの和のオイラー・ラグランジュ方程式を「アインシュタイン-調和方程式」と呼ぶことにする。この方程式は物理(重力理論)においては以前から知られていたが、数学(幾何学)において扱われることはほとんどなかった。また、アインシュタイン-調和方程式はリッチ曲率を用いて書かれるため、知られている例はアインシュタイン多様体をもとに作られたものであった。そのような状況の中、LeBrun によるアインシュタイン・マックスウエル方程式の研究により、複素2次元スカラー曲率一定ケーラー多様体がアインシュタイン-調和方程式の解を与えることが明らかになった。申請者はこの結果を一般化し、次のことを示した;複素2n次元スカラー曲率一定ケーラー多様体上、ある2n次調和形式が存在し、それらの組はアインシュタイン-調和方程式の解となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では本年度、および次年度でケーラー幾何および佐々木幾何を用いて物質場付きのアインシュタイン方程式の解をできるだけ多く構成することを計画していた。本年度はアインシュタイン-調和方程式に対してそれを実行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、引き続きケーラー幾何を用いてアインシュタイン-調和方程式の解を与えることができるか調査する。特に、高次元の場合でも、複素2次元の場合に現れる共形ケーラーな解が存在するかについて研究する予定である。また、佐々木多様体上にアインシュタイン-調和方程式の解を構成したい。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナウイルスにより出張が全くできなかったため当該研究費が生じた。次年度は、共同研究者との研究打ち合わせのため多めの出張を見込んでいる。また、パソコンおよび書籍を多く購入する予定である。
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