2023 Fiscal Year Research-status Report
Is it possible to mathematically formulate origami for materials with the property of stretching and shrinking?
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22K03288
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
近藤 慶 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (70736123)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 雅治 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (30260623)
物部 治徳 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20635809)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 折り紙 / 薄滑解析 / リーマン多様体 / 川崎条件 / 偏微分方程式 / 部分多様体論 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は「研究実施計画」において定めた研究行程のStep 1 にあたるDacorogna-Marcellini-Paoliniによる論文[J. Math. Pures Appl., 2008]の再読を遂行した。しかし、その論文における回復定理の主張に曖昧さと証明のギャップを感じた。ここで、回復定理とは「n次元ユークリッド空間内の単連結な開集合の部分集合である多面体的複体Zの(n-2)次元の全ての辺が川崎条件を満たすとき、Zを特異点集合としてもつ区分的C^1剛体写像が存在する」という主張であった。「主張の曖昧さ」は区分的C^1剛体写像が平坦折りとなる記述はなく、そこは読者に「Zに適当に山折り・谷折りを施せば平坦折りになる」と解釈させるような(または解釈して下さいという)主張であり、実際、論証はない。一方、「証明のギャップ」は、Zの(n-2)次元の辺をループ(ホモトピー)で囲み、川崎条件を適用する議論において、理論構成が明らかでない箇所があった。そこで、当該年度は新たに研究協力者として本学大学院生である富田周君に計画に参加してもらい、「主張の曖昧さ」と「証明のギャップ」について議論を行った。「主張の曖昧さ」は本課題の伸び縮みの性質を持つ折り紙の平坦性の研究と深く関わるため、先ずは回復定理を「必要十分」の強い主張へ強化する研究を(令和6年度に)始めることにした。また、「証明のギャップ」については、場合分けの精密な議論が必要であることがわかり、ギャップを埋めることができた。当該年度の他の実績として、福岡大学で開催された塩谷隆氏の還暦記念研究集会において、本課題における基礎理論である薄滑解析に関する代表者の論文[J. Math. Soc. Japan, 2022]内の結果の応用で得られた「レーブ・ミルナー・ローゼンの球面定理のリプシッツ関数への拡張」について口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度において、昨年度に引き続き教務・学生委員という「重い」の委員の仕事を務めることとなり、多忙であった。また、「研究実績の概要」で述べたように、回復定理の「主張の曖昧さ」と「証明のギャップ」の検証に時間を費やした。このため、「研究実施計画」において定めた研究行程のStep 2へと入ることができず、「やや遅れている」と判断した。しかしながら「主張の曖昧さ」の理解が、今後、課題を遂行する上での正しい道筋である「回復定理を必要十分の強い主張へ強化する」という研究テーマを与えてくれた。よって、この遅れは計画を良い方向に前進させるために必要不可欠な遅れであったと前向きに捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で述べたように、研究協力者である富田周君と回復定理を必要十分の強い主張へ強化する。このため、Dacorogna等が設定している状況下で、リプシッツ写像のクラークの意味での特異点が「山折り・谷折り」と同値か否かの研究を行い、回復定理を必要十分の強い主張へ深化させる。これは、本課題の最終目標である伸び縮みの性質を持つ折り紙の平坦性の研究と深く関わるため、避けて通ることはできない研究である。また、本年度(令和6年度)は、研究協力者である川崎敏和氏が本学で集中講義を担当するため、集中講義の合間の時間に、その最終目標に関して意見交換を行いと考えている。これにより、令和7年度における研究課題遂行の飛躍に繋げていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の内100,000円分については、分担者である谷口が代表者と同じ機関に所属していること及び谷口自身が代表である科研費の使用を優先したために生じた額(昨年度+当該年度)である。一方、次年度使用額の内64,326円については、代表者の当該年度の未使用分であるが、多忙のため1月に計画していた研究集会への出席を取りやめたために生じた額である。使用計画については、令和6年度分として請求した助成金と合わせて、旅費および書籍と備品の購入として使用予定である。
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