2022 Fiscal Year Research-status Report
Geometry of Mirror Symmetry
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22K03296
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
金沢 篤 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 准教授 (40784492)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ミラー対称性 / K3曲面 / Brauer群 / 共形場理論 / BCOV理論 / 保型形式 / tt*-幾何 / 周期積分 |
Outline of Annual Research Achievements |
Dolgachevによる格子偏極K3曲面のミラー対称性の定式化は, "偏極格子の(K3格子内での)直交補格子が双曲格子Uを含む"という条件が課されるため, ミラー対称性の完全な定式化とはなり得ないことが知られていた. 以前の研究において, 我々は対象を一般化K3曲面に拡張することでこの問題を解決し, 一般化K3曲面のミラー対称性の定式化を提案した. 鍵となるアイデアは向井格子偏極である. 本年度は特に直交補格子が双曲格子の真の定数倍U(k)のみ含む場合をさらに考察し, 幾何学的にはBrauer群の捻り, 及び非可換変形として理解できることを示した. また向井格子偏極を課した一般化K3曲面のモジュライ空間の記述をより明確にし, 共形場理論的なミラー対称性(Aspinwall-Morrison)との関係を明らかにした.
細野忍氏との共同研究において, 種数1のミラー対称性(BCOV理論の特別な場合)を援用することで, 格子偏極K3曲面のモジュライ空間であるIV型対称領域のカスプ形式を構成する新たな手法を提案した. 具体的には, 3次元Calabi-Yau多様体に関する種数1のWitten指数の位相極限公式をK3曲面に適当に適用することでBCOV公式を定義し, さらにモジュライ空間上で自然な境界条件を課すことで保型形式が得られることを多くの例で確認した. 特にClingher-Doranが研究したU+E_8+E_9偏極K3曲面に対しては, BCOV公式から井草カスプ形式が得られることを示した. 一般論を確立するまでには至っていないが, 多くの興味深い例の存在はこの新しい分野の重要性を示唆していると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般化K3曲面のミラー対称性の理解を深める具体的な計算を実行できたこと, 及びBCOVカスプ形式に関して論文を1本纏めることができたため. どちらも類似の研究は見受けられないことから, 先駆的な研究だと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
一般化K3曲面のミラー対称性の理解がある程度深まったので, 3次元の場合に本格的に取り組みたい. 一般化K3曲面の自己同型群に関しても少しずつ研究を進めている. またK3曲面のモジュライ空間のtt*-幾何に関しても研究を進め, BCOV理論, 金子-Zagier理論(準保型形式)との関係も明らかにしたい.
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Causes of Carryover |
コロナのために海外出張が中止になった. また計算機なと物品購入を次年度に延期した.
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