2022 Fiscal Year Research-status Report
Classification of cosmetic surgeries on knots in rational homology spheres
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22K03301
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
市原 一裕 日本大学, 文理学部, 教授 (00388357)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 矯飾的手術 / デーン手術 / 3次元多様体 / 結び目 |
Outline of Annual Research Achievements |
局所的に3次元の座標が設定できる空間(位相空間)を3次元多様体といい,3次元多様体の改変操作としてよく知られている操作にデーン手術と呼ばれる操作がある。一般には,デーン手術により,元とは異なる3次元多様体が生成されるが,本研究課題の主な研究対象は,元の多様体と同じ(同相な)多様体を生成する非自明なデーン手術,いわゆる矯飾的手術(cosmetic surgery)である。設定した研究目的は,様々な研究技法を組み合わせた融合的なアプローチにより,有理ホモロジー球面(1次元ホモロジー群が巡回群となり2次元以上のホモロジー群が自明となるような3次元多様体)内の結び目に沿った矯飾的手術を分類することである。より具体的には,A) 有理ホモロジー球面内の非自明な結び目に対して,向きを保って同相な3次元多様体を生成する手術(純矯飾的手術)の非存在を示すこと,B) 有理ホモロジー球面内の結び目に沿った向きが逆で同相な3次元多様体を生成する手術(鏡像矯飾的手術)を分類すること,を目指す。 当該年度に得られた主な研究成果は,3次元球面内の結び目が鏡像矯飾的手術を許容するためのいくつかの必要条件を得たことである。これらの条件(制約条件)を得るために,3次元多様体の不変量,特に,量子SO(3)不変量,ヒーガードフレアホモロジーの階数を利用した。またこれらの条件を用いることで,10交点以下の結び目表のおよそ3/4の結び目について,現在知られているもの以外の鏡像矯飾的手術は存在しないことを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の初年度であり,現在まで進めて来た研究の総括を基に本研究への足がかりを探ることを目的としていた。そのため,近年盛んに研究されているヒーガード・フレア理論,および,3次元多様体の量子不変量を用いたアプローチについて再検討し,結果として,3次元球面内の結び目に沿った鏡像矯飾的手術に焦点を絞り,より精密な結果を得ることができた。これは当該研究課題の目的に向けた研究の足掛かりとして非常に有意義なスタートを切ることができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き,現在まで進めて来た研究の総括をしつつ,本研究課題の目標達成に向けて研究を進めていく。これまでの先行研究の多くは,最も単純な3次元多様体である3次元球面内の結び目に関するものであり,それを踏まえて,より一般の有理ホモロジー球面内の結び目についての研究に深化・発展させていく。具体的な手法として,3次元多様体の双曲構造・ザイフェルト束構造の研究や,3次元多様体の有限型不変量・普遍摂動的不変量を利用したアプローチを試みる。また一方で,古典的な手法,3次元多様体に埋め込まれた本質的曲面や,3次元多様体のヒーガード分解・結び目の橋分解を用いた手法,についても検討をし模索していく。ただし,最先端の研究動向によって,上記のアプローチの有効性に変化が生じることもありうる。そのため,国内外の研究集会等に積極的に参加し,柔軟に研究計画を変更していくことも検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウィルス感染症感染拡大のため,研究出張,研究者招聘について,予定通りの経費使用ができなかった。 (使用計画)社会状況が許せば,海外での国際研究集会への参加や,海外からの研究者招聘を再検討する。またあわせて関連する研究集会の開催を検討する。ま た国内外の研究動向を踏まえて,研究遂行にコンピュータ援用研究の導入を検討し,そのための支出についても検討を進める。
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