2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K03302
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
浅岡 正幸 同志社大学, 理工学部, 教授 (10314832)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 力学系理論 / 低次元多様体 / 葉層構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,Goodman-Fried手術で古典的なものにすることができない3次元Anosov流の存在問題について研究を行った.前年度に考察した手術に関する不変量は残念ながら多くの場合には自明となってしまい,そうでない例を構成することは簡単ではないことが判明した.そのため,別なアプローチとして,Anosov流と横断的なトーラスが存在する例について,それが手術で古典的なものになったときにトーラスがどのように埋め込まれるかを詳しく調べ,Brunellaが構成した測地流に横断的なトーラスの例を調べ,トーラスで分けられた領域の数がいくらでも多い例が存在することも確認し,また,安定葉層のトーラスへの制限がReeb成分を持たないことを確認した.Goodman-Fried手術で古典的なものに出来るAnosov流で横断的なトーラスを持つものはトーラス上の葉層がReeb成分を持つものしか知られていないが,Brunellaの例においてもそうであったことになる.そこで,Reeb成分を持つAnosov流の例も存在するため,そのようなReeb成分を持つAnosov流でGoodman-Fried手術で古典的なものにできる例が存在するかという問題を設定し,そうした例を調べる第一歩として,Birkhoff切断の構成をすべく研究を行った. こうした研究と並行して,中央大学の三松氏との共同研究により,高次元Anosov微分同相写像が接触構造を保つことはないことを証明することに成功した.接触構造を保つAnosov流の存在は古くから知られている一方で,そのようなAnosov微分同相写像の例は知られておらず,Eliashbergによってその存在が期待されていたが,我々の結果によりそのようなものが存在しないことがわかったことになる.この結果は現在執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に考察した不変量によるアプローチには困難が見つかったが,その一方でAnosov流に横断的なトーラスへの安定葉層の制限がReeb成分を持つことがGoodman-Fried手術で古典的なものにできることの障害となる可能性があることがわかり,そうした葉層を保つ場合を調べるという新たなアプローチが見つかった.また,Brunellaの構成を用いることで横断的なトーラスが手術後に古典的なAnosov流を持つ空間にどのように埋め込まれるかを調べることができるようになり,問題解明への具体的な手がかりも増えた.これらの理由により研究は概ね順調に進展していると考えられる. また,研究を通じて得られたAnosov力学系に対する様々な知見を応用することで,Anosov微分同相写像が接触構造を保つことがないこともわかったが,これは研究開始当初は予測しなかった成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
Brunellaの構成をより詳しく調べることで,横断的なトーラスを持つAnosov流をGoodman-Fried手術で古典的なものにしたときに,トーラスがどのように埋め込まれているかについてを知見を得ることが次年度の研究でまず行うべきことである.得られた知見を用いて,もし安定葉層のトーラスへの制限がReeb成分を持ちえないことを示すことができれば,Goodman-Fried手術で古典的なものに出来ない例があることになる. また,逆の方向からのアプローチとして,安定葉層の横断的トーラスへの制限がReeb成分を持つ例に対して,Birkhoff切断を具体的に構成することで,その安定葉層,不安定葉層に関する理解を深めたい.そうすることで,Goodman-Fried手術で古典的なものにできるかできないかの判定ができる可能性もある.
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Causes of Carryover |
いくつかの海外での研究集会への出席を予定していたが,学内での用務と日程がぶつかってしまったために出席できず,その分の予算が今年度は未使用に終わった.この未使用分は次年度に招待されることになった海外での研究集会への旅費などに当てる予定である.
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