Project/Area Number |
22K03306
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
三上 健太郎 秋田大学, 名誉教授, 名誉教授 (70006592)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リー代数 / リー超代数 / ホモロジー群 / コホモロジー群 / エンゲル構造 / ポアソン構造 / ポアソンコホモロジー群 |
Outline of Annual Research Achievements |
リー超代数(Lie superalgebra)の典型例はスカウテン括弧積を備えた可微分多様体の接束(tangent bundle)の交代積(外積)の直和です。可微分多様体として最も自然な数空間を考え, 扱う接束と交代積は多項式係数のものに制限して double weight なるアイデ アの元, doubly weighted chain complex そしてそのホモロジー群を考えました。2次以外のホモロジー群の Betti 数は Eulerベクトル場の効果で 0 である結果を得ていたが, 2次ホモロジー群についても Betti数が 0 になるとの証明を別途得ました。それが, 研究発表 [雑誌論文] の最初の論文 Mikami, Kentaro and Mizutani, Tadayoshi, "The second Betti number of doubly weighted homology groups of some pre Lie superalgebra", Tohoku Mathematical Journal, 74, 2022, 2, 301--311, https://doi.org/10.2748/tmj.20210208, eprint = 1902.09137 です。 可微分多様体の余接束(cotangent bundle)の交代積の直和も外微分作用素を用いてリー 超代数になる事を知り(cf. "Mikami, Kentaro and Mizutani, Tadayoshi", "Superalgebra structure on differential forms of manifold", arXiv:2105.09738, 2021), リー超代数のホモロジー群の基礎研究はすそ野が広がりました。リー超代数のホモロジー群の基礎研究と平行して応用を模索し, 一つの応用として4次元多様体のエンゲル構造をリー代数の場合に考察し, 掛かるリー代数が同型でない事をリー超代数ホモロジー群を使って判定出来たとの内容が, 研究発表 [雑誌論文] の二つ目の論文で "K. Mikami, T. Mizutani, and H. Sato, Application of superalgebra homology groups to distinguish Engel-like structures, arXiv{math.DG}, 2212.14495, 2022" としてarXiv に投稿し採択されました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
春の学会(埼玉大)・秋の学会(北大), 夏にあったポアソン国際研究集会(The 12th Poisson 2022 (July 25-29, 2022) at the Spanish National Research Council, Madrid, The Poisson 2022 Advanced School (July 18-22, 2022) at the Centre de Recerca Mathematica, Barcelona), トポロジーシンポジウム(北見工大, Aug 17-19), 幾何学シンポジウム(東京理科大・野田 Aug 30-Sep 02)等々への出席をコロナ禍と言う事で断念し, on-line参加に努めました。年度末に定年退職する全国各地の数学研究者による最終講義も可能な限り on-line参加しましたが, 旅費を計上しながらそれを全く生かせず残念でした。年度途中で研究室の移動があり, 研究環境の整備安定化に時間を要し購入したワークステーションの稼働も年度末となりましたが, 今後の本格フル稼働が期待されます。このような制約の中でも, リー超代数の研究は自家製の数式処理プログラム集の開発と共に進んでいます。 スカウテン括弧積はリー超代数の典型例で, 1980年代当時はポアソン構造を特徴付ける またポアソン構造を拡張する道具として利用され, ポアソン構造とスカウテン括弧積の性質からポアソンコホモロジー群(Poisson cohomology groups)が定義されました。最近, 一般のリー超代数に対してもこの種の概念はあり得るという発想に至りました。それが "リー超代数のPoisson-likeコホモロジー群" なる新たな研究テーマです。 実績欄でも述べた様に, 可微分多様体の余接束の交代積の直和も外微分作用素を用いて リー超代数になり(cf. arXiv:2105.09738),それから定まるPoisson-like コホモロジー 群が, 幾何学研究で基本的に用いられるde Rham コホモロジー群を定める事が判明し, 更に具体的な空間の場合の結果を得, "K. Mikami, T. Mizutani, and H. Sato", "Poisson-like cohomologies associated with some Lie superalgebras"として投稿準 備中です。
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Strategy for Future Research Activity |
[1] 可微分多様体 M の接束 TM の交代積 Alt(TM,i) ここで i は 1 から Mの次元 n まで動きます。交代積の直和 TM + Alt(TM,2) + ... + Alt(TM, n) とスカウテン括弧積の組はリー超代数の典型例です。実績欄でも述べた様に, 可微分多様体の余接束の交代積の直和も外微分作用素を用いてリー超代数になります(cf. arXiv:2105.09738)。これら2つの典型的なリー超代数の直和に"非自明"なリー超代数の構造があるか否かは興味深い問題です。この問を常に念頭に置き研究を続けます。 [2] 実績欄で述べたように, 研究発表 [雑誌論文] の二つ目の論文 "K. Mikami, T. Mizutani, and H. Sato, Application of superalgebra homology groups to distinguish Engel-like structures, arXiv{math.DG}, 2212.14495, 2022"の公開と同 時に秋田大学数学教室の URL: http://www.math.akita-u.ac.jp/~mikami/ に dec30-2022.tgz を公開中です。 内容は上記研究に直接使われた自家製数式処理Mapleソフト群 DualAlg-Engel-v44.mpl.with, Engel-mySols-v2.mpl.with, Engel-try-1-out4.txt, big.mla 等です。スカウテン括弧積を扱う必要に迫られて, 1980年代にスカウテン括弧積をMapleで実装したのが自家製数式処理ソフト開発の始まりです。これまで 40年に渡る関連するテーマ毎の多量の蓄積があります。これらの整理・公開も課題です。 [3] 一般に(余)鎖複体そして(コ)ホモロジー群, そして我々のリー超代数のホモロジー群は離散かつ一次元的です。それに対し Bott-Shulman-Stasheff による 二重複体(double complex)なる離散かつ二次元的な概念があります(1976年)。我々が研究を続けているリー超代数のホモロジー群に対し, また我々が新たに発想した Poisson-like コホモロジー群に対し二重複体を構築出来るか否か, その手掛かりを多くの実験を通して研究します。鎖複体の双対(dual)が手掛かりになると期待しています。
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Causes of Carryover |
コロナ禍と言う事で, 春の学会・秋の学会, 夏にあったポアソン国際研究集会(スペイン), トポロジーシンポジウム, 幾何学シンポジウム等々への出席を断念しました。従って旅費を使用する機会を失いそのまま次年度へ繰り越しとなりました。次年度は計画通り実行予定です。
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Remarks |
研究発表[雑誌論文] "K. Mikami, T. Mizutani, and H. Sato, Application of superalgebra homology groups to distinguish Engel-like structures, arXiv{math.DG}, 2212.14495, 2022" の研究に用いた自家製Mapleソフト群と基本データを公開しました。
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