2022 Fiscal Year Research-status Report
ディリクレ基本領域が導く閉双曲多様体の多面体分割の構成と特徴付け
Project/Area Number |
22K03309
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
牛島 顕 兵庫県立大学, 国際商経学部, 教授 (50323803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 敏浩 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (00172354)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Cayley-Klein幾何学 / 双曲幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
双曲平面とは、定曲率-1のリーマン多様体であるが、ユークリッド平面における平行線公準の成り立たない世界として構築された。そのため、平行線に関係するユークリッド平面での定理の一部が、双曲平面では成り立たなかったり、形を変えて成り立ったりしている。 この研究では、双曲平面に作用する離散群が定める曲面のディリクレ領域を決定することを最終的な目標としており、その第一歩として離散群が三角群の場合を詳しく調べる。三角群がコンパクトな場合には、ユークリッド平面上の三角形に対するチェバの定理に対応する、双曲平面上の三角形に対するチェバの定理が重要な役割を果たして、ディリクレ領域の決定が既になされている。そこで、既知の結果をコンパクトとは限らない三角群に一般化するには、理想頂点や超理想頂点が混在する三角形に対して、双曲平面上のチェバの定理を一般化することが必要となる。なお、理想頂点や超理想頂点というのは、ユークリッド平面上の三角形に対しては生じず、双曲平面上の三角形に特有の現象である。 今年度の研究では、そのような三角形に対するチェバの定理の一般化の証明を行うために、Cayley-Klein幾何学として双曲平面を捉え、証明の方針を得ることができた。Cayley-Klein幾何学とは、射影空間に二次形式を設定することで距離や角度を定義し、幾何学を定めるものであり、双曲幾何学だけではなくユークリッド幾何学や球面幾何学も、Cayley-Klein幾何学として定義することができる。Cayley-Klein幾何学として双曲平面における、理想頂点や超理想頂点の取り扱いを詳しく調べることで、求めるチェバの定理の証明の方針を得ることができ、その成果を幾つかの研究集会で発表し専門家と議論を交わした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間の前半の研究課題として設定した、理想頂点や超理想頂点が混在する三角形が生成する三角群から定まる双曲曲面のディリクレ領域を決定する研究に取り組んだ。まず、双曲平面における三角形の、チェバの定理やメネラウスの定理を、理想頂点や超理想頂点が混在する三角形に対し一般化する必要があることを確認した。この様な定理は既知の結果の組み合わせで証明することはできると思われるが、今後の発展を見越して統一的な証明を検討した。具体的には、Cayley-Klein幾何学として双曲平面を取り扱うことで、必要な統一的証明を得ることが予想できた。今年度は、この証明に取り掛かり、証明の骨子を得るところまで到達した。今年度の後半では、その成果を幾つかの研究集会で発表し、有益な意見交換を他の研究者と行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、【現在までの進捗状況】欄で記載した、証明を完成し出版することが当初の目標である。この目標が達成されれば、その結果を用いて、理想頂点や超理想頂点が混在する三角形が生成する三角群から定まる双曲曲面のディリクレ領域を決定することができるようになると期待されるので、今年度の後半にはそれに取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
適切な使用を心掛けた結果、当該年度所要額の約4.4%に当たる額が次年度使用額となった。多額ではないので、当初の使用計画の変更に必要性は生じない。物品費や旅費などとして使用する。
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