2023 Fiscal Year Research-status Report
Characterization of singular points and study of surface singularities
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22K03312
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐治 健太郎 神戸大学, 理学研究科, 教授 (70451432)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 特異点 / 波面 / 等長標準形 / 特異曲率 |
Outline of Annual Research Achievements |
波面の特異点の微分幾何学的研究に関して、波面の余次元1特異点のうち、余階数2である特異点であるD4+特異点に対して定義域の微分同相写像と像域の等長写像のみを用いて特異点の式に表れる係数を可能な限り減らした式(等長標準形・標準形と呼ぶ)を与えた。これを用いて、その特異点近辺でのガウス曲率の振る舞いを調べ、ガウス曲率測度が有界であることを証明した。さらにこの特異点に接続している4本のカスプ辺上での特異曲率と法曲率の漸近挙動を調べ、標準形に表れる係数の関係によって特異曲率の符号がどのように変わるかを明らかにした。さらにこれらの関係とガウス曲率の関係も明らかにした。また、特異曲率の漸近挙動に関しては特異点曲線のパラメーターに対して何次のオーダーで発散するかを決定し、これを用いて特異曲率測度が有界であることも証明した。さらにこれをもとにガウス・ボンネ型の定理を証明した。これには通常のガウス・ボンネの定理に対してこの特異点の中心角の4倍の分の寄与があることも示している。さらに標準形の係数のうち2次のジェットで決まる係数がただ一つであることを示した。そしてこの係数を第一基本形式の係数のみで表示することにより、この係数が表す特異点の不変量が内在的であることを示した。更に高い次数の項に現れるの内在性についても検討した。 いくつかの波面でこの特異点が表れる際にこの不変量を計算し、どのような幾何学的意味があるかを検討した。また、D4-特異点に対しては標準形を複素微分を用いて与えた。これを用いて今後特異点近辺でのガウス曲率の振る舞いを調べることができるようになった。また、この特異点では微分幾何学的に重要な曲面に表れることが知られている。したがって、標準形の係数を不変量とみなし、計算することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である波面の余次元1特異点のうち、余階数2である特異点であるD4+特異点とD4-特異点に対して標準形を与えることができた。さらに、これを用いて、その特異点近辺でのガウス曲率の振る舞いを調べ、ガウス曲率測度が有界であることを証明できた。さらにこの特異点に接続している4本のカスプ辺上での特異曲率と法曲率の漸近挙動を調べ、標準形に表れる係数の関係によって特異曲率の符号がどのように変わるかを明らかにできた。さらに当初の計画にはなかったが、特異点に接続しているカスプ辺の符号と付近のガウス曲率の関係も明らかにできた。さらに当初の計画にあった特異点の大域的な関係に関しては特異曲率の漸近挙動を調べ、特異曲率測度が有界であることが証明でき、これをうけてガウス・ボンネ型の定理を証明した。また、標準形の係数のうち2次のジェットで決まる係数がただ一つであり、この係数を不変量とみて、その内在性を論じた。これにより、さらに高い次数のジェットで決まる他の係数が内在的か外在的かに集中できることになった。 同じような性質を持っていると思われるD4-特異点に対しては標準形を複素微分を用いて与えることができ、これを用いて今後特異点近辺でのガウス曲率の振る舞いを調べることができるようになり、微分幾何学的に重要な曲面に表れる特異点の幾何学をより調べられるようになった。これらによって今後の研究の方針を立てやすくなった。 これらのことから研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究課題を達成するために曲面に現れる代表的な特異点の判定法を与え、特異点の微分幾何学の研究を行う。そのために当初の計画に従い、まだ判定法と標準形が与えられていない特異点に対して特異点の判定法と特異点の像域の等長写像のみをもちいた標準形の研究を行う。余階数1の特異点に関してはこれまでの研究で概ね満足の行く結果が得られているので、今後は余階数2の特異点をさらに研究する。また、近年動く特異点に対して動くパラメーターを取り込んだ研究が行われ、興味深い成果が報告された。波面の特異点も余次元が1のものは1パラメーターで動くのがジェネリックな状況であり、波面の特異点に対して同種の研究は非常に興味深いため、この研究を受けて新たな研究課題として取り組む。また、余階数2の特異点のモジュライの幾何学的意味は未解明な部分が多く、様々な微分幾何的性質との関連を今後調べる。また、余階数2の特異点も1パラメーターで動くのがジェネリックな状況であるため、これも動くパラメーターを取り込んだ標準形を速やかに作る必要がある。 曲面上の曲線と枠を用いた可展面に関して、カスプ辺を通る曲線に対してもある程度の研究が可能であることがわかってきた。カスプ辺の特異点集合と退化方向との接触度合いとその曲線に沿う枠の幾何学の関係を調べる。 ミンコフスキ空間で同様のことを考えると、ホロ円が関係した線織面ができ、その不変量は与えられた枠付き曲線のホロ円的幾何学に関する情報を表す。ミンコフスキ空間でのカスプ辺に対して同様の研究を行う。加葉田氏・長谷川氏と研究中の曲面の射影に現れる特異点と射影から作られる柱面の接触との関係について、射影に現れる特異点がカスプとなる場合に高次のカスプを持つ場合にまだ解明すべきことが残っており、この研究も推進する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために予定していたよりも海外渡航が行えなかった。休止されていた研究集会が復活してきており、次年度には多くの研究集会が開かれることがわかった。このことから、海外での成果発表と直接討論は次年度に行うこととしたため次年度使用額が生じた。 今年度はValenciaで大きな特異点に関する国際会議があるのでValenciaを訪問し、同時にNuno-Ballesteros氏、Oset Sinha氏と曲面の特異点に関して直接の討論を行う。また、S. J. Rio Pretoを訪問し、Martins氏らと曲面の特異点に関する双対性に関しての黒板を挟んでの直接の研究討論を行う。さらに、Warszawaを訪問し、Domitrz氏、Zierwinski氏らと黒板を用いた討論を行い、特異点論の応用可能性について情報収集する。
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