2022 Fiscal Year Research-status Report
楕円ファイバーカラビ-ヤウ空間における非小平型特異点の研究
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22K03327
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
谷 太郎 久留米工業高等専門学校, 一般科目(理科系), 准教授 (40421359)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非小平型特異点 / 楕円ファイバーカラビ-ヤウ |
Outline of Annual Research Achievements |
3次元の楕円ファイバーカラビ-ヤウ多様体の「multiple enhancement」における非小平型特異点について研究を進めた。このような多様体では、2次元底空間における余次元1の discriminant locus (複素1次元の線)の上で楕円ファイバーが退化するのだが、その特異性 G が、余次元2の特別な点の上で G' に enhance する現象が生じる。このとき、rank G' が rank G よりも2以上大きい場合を multiple enhancement といい、その特異点の構造はこれまでよくわかっていなかった。私は G = SU(5) で G' = E6, E7, E8 の各場合について、特異点解消を具体的に実行した。その結果、G'= E6 の場合、G → G'の近づき方に応じて multiple enhance の仕方は複数あり、対応して、特異点解消によって生じる例外集合も複数種類あることがわかった。交点行列を見ると、そのうちの一つは通常の E6 Dynkin 図(小平型)であるが、残りは、一部の node を取り去った "incomplete E6 type" (非小平型)になっていることがわかった。これは "complete/incomplete" resolution と呼ばれる現象で、rank 1 の(multiple ではない普通の)enhancement で G'/G が擬実表現を含む場合に生じることが知られていた。同じ現象が multiple enhancement においても生じることをはじめて明らかにした。 また、E7, E8 においては、complete resolution は実行できず、incomplete resolution のみが可能であることもわかった。このことは非小平型特異点の普遍性を示すものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元の楕円ファイバーカラビ-ヤウ多様体の「multiple enhancement」における非小平型特異点について理解を進めることができた。現在、結果を論文としてまとめているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
multiple enhancement において、incomplete resolution によって非小平型の例外集合が得られることはわかった。しかし、G' = E8 の場合だけは、その物理的解釈がうまくできない。特異点の構造は、超弦理論(F理論)における粒子スペクトルの種類と数に読み替えることができるのだが、E8 の場合、非小平型特異点から読み取ったスペクトルが理論の量子条件(アノマリー相殺条件)を破ってしまうのである。まずこの原因を明らかにし、解決する。次に、物理的により現実に近い、4次元の楕円ファイバーカラビ-ヤウ多様体における非小平型特異点の構造解析に着手する。
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Causes of Carryover |
物品費について、半導体不足の影響等によってパソコンの購入を控えたため、次年度使用額が生じた。旅費については、体調不良(コロナ感染)等により対面での議論を控えたため、次年度使用額が生じた。なお、令和5年度はパソコンおよび計算ソフトを購入する予定である。また、高エネルギー加速器研究機構等にて対面での議論を行い、学会発表も行う予定である。
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