2023 Fiscal Year Research-status Report
Long-term behavior of stochastic models on lattices with spatio-temporal interactions
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22K03333
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
竹居 正登 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (60460789)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 記憶のあるランダムウォーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も,研究計画に従って空間的・時間的に相互作用をもつ確率モデルの研究を進めた.その結果(1) 記憶のあるランダムウォークに対する極限定理の研究,(2) 記憶のあるランダムウォークに対する極限定理を応用した至る所微分不可能な連続関数の性質の研究について,パーコレーションからの着想を生かしながら考察を進め,新たな知見を蓄積することができた. 特に,(1)のテーマについて得られた成果のひとつについて述べる.グラフ上の強化型ランダムウォークにおいては,ウォーカーが現在地点から隣接点へ移動する際にその時点での重みに比例した確率で移動先を選ぶ.ここで,未通過の辺の重みは 1 とし,通過したことのある辺の重みをδ>0とするのがonce-reinforced random walk (以下ORRW)である.このモデルは,単純な規則で推移するにも関わらず理論的取り扱いが容易でないことで知られている.Serlet (2013)は,半直線上のORRWが点 x に到達する時刻について詳しく研究し,その応用としてウォーカーが時刻 n までに訪問した領域の大きさの上からの評価を与えた.Andrea Collevecchio氏 (Monash University), 池澤哲氏 (横浜国立大学)との共同研究において,Serlet (2013)による上からの評価を改良するとともに,これと合致する下からの評価を与えることで完全な形の重複対数の法則を証明した. このORRWに関する成果のほか,本研究計画開始以来エレファントランダムウォークに関して蓄積してきた研究成果を数篇の論文にとりまとめる作業を進め,準備が整ったものから順次学術雑誌に投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パーコレーションにおける極限定理の精密化の極限挙動については,研究の進捗が計画よりもやや遅れている感があり,基本に立ち返って地道な研究を根気よく推進している.一方,エレファントランダムウォークをはじめとして,自己の軌跡が推移確率に影響を及ぼすランダムウォークに関してはパーコレーションの着想を生かした研究を進めることができ,成果が蓄積できている.また,半直線上のORRWの訪問領域の大きさに関する重複対数の法則については,パーコレーション理論の観点からも興味ある結果が得られたと考えている.そして,エレファントランダムウォークの研究から派生した微分不可能な連続関数の研究も,当初計画に含まれない範囲にまで研究の幅を広げつつある. 以上のことから,総合的に判断して「おおむね順調に進展している」と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
パーコレーション・強化型ランダムウォークに関する種々の極限定理について,本年度までの研究をさらに推し進めて新たな成果を得ることを目指す.特に,格子点のランダム彩色に伴うファーストパッセージパーコレーション問題に関する考察はさらに深めていきたい.強化型ランダムウォークに関しては,木グラフ上のモデルを中心に,さらに精密な極限定理が得られないか考察を続ける.これらを両輪とした研究推進により,パーコレーションにおける極限定理の精密化への道すじをつけてゆく.両分野の研究の接点にあたるエレファントランダムウォークとその変形モデルに関して,長時間挙動の多様性を論じることも重要な課題となる. これらの研究を推進するために,最新の数学書を購入し情報を収集する必要がある.また,パーコレーションや記憶のあるランダムウォークについて活発に研究している国内外の研究者を訪問・招聘して意見交換を行なう.得られた成果については国内外の研究集会において発表し,参加者と討論することでさらなる深化を目指す.
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Causes of Carryover |
(理由) 発売予告があり購入を予定していた洋書で,当該年度内に発売されなかったものがあったため. (使用計画) 次年度この洋書が発売されれば即座に購入して研究計画の遂行に役立て,やはり発売されないときには研究計画の遂行に必要な他の経費に充当する.
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