2022 Fiscal Year Research-status Report
A study on value distribution properties of meromorphic functions generated by a wide variety of series and an investigation into their possible algebraic analogues
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22K03335
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤解 和也 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (30260558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石崎 克也 放送大学, 教養学部, 教授 (60202991)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ネバンリンナ理論 / 値分布論 / 超越有理型函数 / 常微分方程式 / 差分方程式 / 指数多項式 / ディオファントス近似 / 連分数展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究のための準備の過程において、値分布論の主要な議論の中で差分(シフト)作用素が微分作用素と同程度に機能すること、即ち類似した多くの評価式や定理が成立することが確認できており、またこれらの結果についてしばしば極値的な挙動を示す代表例である指数多項式が持つ函数論的性質、特に零点分布や微分的代数退化性について多くの知見を得ていた。本報告の対象期間では、それらを数論的な観点から再検討し新たな進展の可能性を求めて研究を実施した。また、複素解析学のかなり広い領域でもやはり差分(シフト)作用素が微分作用素と同等性を持ち得ることを基礎に、それらの超離散的な読み替えやネバンリンナ理論類似が導出されることから、S. Vojta や野口潤次郎らの業績に鑑みたとき、ディオファントス近似理論への寄与を模索することは自然であった。差分(シフト)を数論的な作用として如何に活用するかについて、具体的な例や古典的な結果の観察を通して今回特に連分数展開を中心に据えた議論が有益であることを確認した。これが今後も重要な研究指針になる。 一方で当該年度の初期では、まず日本数学会特別講演の機会を得て Stothers-Mason の定理の差分版を導出する際に用いた手法が方程式 a+b=c を満たす整数列に対していかなる評価を与えうるかについての観察と検証を深化させ、また Vojta のディオファントス近似理論とは異なる形で、特に差分(シフト)作用に対応した評価の可能性を模索し既知の結果をその側面から再発見できるか否かを調査した。その結果として今後の本課題研究期間に於いて明らかにすべき問題や予想を見出すに至った。さらに差分方程式について国際共同研究を継続して、その成果をプレプリントとしてまとめたことなどが本年度の研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果として記載した雑誌論文及び学会発表を通して、本課題の開始に向け準備をしていた個々の考察を集約・深化させ新たな問題設定を行うと共に、その解決を可能にし得る手法の洗い出しとそれらの有用性などを確認することができた。また既存の研究成果との関りという視点から可能性を有する複数の有意な観察結果が得られた。例えば、柳原二郎が1982年に提出していた特殊な差分方程式の可積分性に関する未解決予想を対象として、本研究課題の分担者である石崎克也氏と Eastern Finland 大学の R. Korhonen 氏と共同研究を実施している。その議論を通して、同予想の基礎となっていた定理の証明を補完して、新たに肯定的な例を構成し、それらが解決に重要な役割を果たすとの認識が得られた。現在、その方針に従い細部についての考察を進めている。この他、ディオファントス近似、特に連分数展開に関する既存の結果を、ネバンリンナ理論的な視点に差分(シフト)作用素の効果を考慮して再検証し、いわゆる"ネバンリンナの第二主要定理"的な評価、例えば Roth の定理に類似する不等式の導出へと結びつける方法を模索している。その成否の判明には少なくとも本研究を実施する期間のすべてを要する可能性があり、今回の報告には含めるべきでないかもしれないが、それに向けた研究の方向性が明確なったことから、敢えて記したい。今後の具体策については、次の推進方策の項目に記すが、以上具体的な方策を見出し、これらの進展について相応の確信を得たことから、「おおむね順調に進展している」と自己評価した次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
方策は順に、1)柳原予想を肯定的に解決する。ただし、既に述べているようにその主張は一部修正をしなければない可能性があり、その反例の構成も併せて行う。 2)Roth の定理に先立ち 1936年に Th. Schneider が与えている超越数を特徴づける有理近似列の分布に関する条件に注目し、これを改めて差分(シフト)作用素的視点から検証し、その導出手法にネバンリンナ理論からの意味づけを施す。これにより「Vojtaの辞書」にない「対数微分の補題」の訳語を、差分(シフト)の表現を用いて見出す可能性を模索する。古典的な結果であるが故に、差分(シフト)の意味合いをより明確に見出すことができると期待する。 3)Z. Ye は2004年、連分数展開に関する値分布論の構築を S. Lang に示唆されたことを動機として興味深い論文を出版している。しかしながら、その主結果では第二主要定理の誤差項の精密評価が主たる目的のように見える。そのため、Lang 自身が意図していたと想像し得る評価、例えば Rothの定理の精密化につながる主張とはなっていない。では、Lang が期待していたであろう値分布論的な評価は果たしてどのような形をしていたのか。また、それはどのような手法で証明し得るのか。これらの疑問についての解決の手掛かりを得るため、まず Ye の論文における議論を改めて検証し、差分(シフト)作用の効果を組み入れる可能性を検討することで、本課題の目的に沿う成果に向けた研究を推進させたい。この際、3)の成功が2)の成功に連動する流れを理想としている。 以上のような研究を通して数論に関係した成果へと繋げていくことが本課題研究の最終的な目標である。
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Research Products
(4 results)